堕落
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仲村は急いで豊島園の駐車場まで行った。
例の如く開門はワンボックスカーですでに仲村を待っていた。
仲村は開門の車に近づくと助手席に乗り込んだ。
開門は待ちきれないのかだいぶ気が立っていた。
「仲村何分待たせればいいんだ?殺すぞ!」
「すいません急いできたんですけど」
「いくら持ってきたんだ?」
「前と同じで1gです」
仲村は開門のシャブを右ポケット、ココロのシャブを左ポケットに間違わないように予め入れていた。
開門に間違いなくシャブ1g入りの封筒を渡した。
開門は封筒を受け取ると仲村に言った。
「いくらだ?」
いくらだと聞かれても困る。10万といえば10万払うのか?仲村は逆に聞きたかった。
「前と一緒です」
仲村がそう言うと開門は切れ目で機嫌が悪いのか怒鳴りだした。
「だからいくらかって聞いてるんだ!お前はオレにシノギかけるのか?オレをナメてるのか?お前、高山に言ってシャブの密売クビにするぞコラァ!」
「ナメてません。すいません。本当にすいません。2万円で結構です。すいません」
仲村は開門に悪いとは思っていないがひたすら謝った。
開門は2万でも高けぇーよと独り言をボヤキながら仲村に2万円を渡した。
「よし、じゃあ今日は渋谷に行くか!」
開門は今日も仲村を連れて変態オナニーをするつもりなのか?もう開門に付き合わされるのは懲りた。それに今日はこれからココロと変態をしなければいけない。
その時、仲村の携帯電話が鳴った。
今の時間ならココロしかいないだろう?仲村は携帯電話を見るとやはり電話の相手はココロだった。
今の状況で電話に出たくはない。仲村が電話に出るのをためらっていると開門がすかさず突っ込む。
「仲村電話に出ないのか?相手は誰だ?」
ここでシャブ好きの女などと言ってしまうと今からココロと開門を交える3Pになる可能性もある。それどころか運が悪ければ店の女だとバレテしまいとんでもない事になるかもしれない。
絶対にココロの事は隠さなければいけない。
仲村は携帯電話を出た。仲村は頭の回転が速い。悪知恵やウソは得意である。
「もしもし今そっちに向かってるからちょっと待ってて・・・・・うんそうだよ。仕事だっていってるだろ。急ぐからじゃあな」
そう言って一方的に電話を切った。
「開門さん、じつは今日は妹が来てまして・・・」
「・・・親族が家に来てるのか?」
「はいそうなんです。だから今日は勘弁してください。妹が待ってるんです」
「ウソじゃねぇだろうな?オレはウソは大嫌いだからな!」
「ウソなわけないじゃないですか」
「それなら仕方ねぇ。早く行ってやれ。家族は大事にしてやれよ!これで美味いモノでも食わせてやれ」
開門は仲村に3万円渡した。シャブ代とあわせて5万だ。
開門はそういう仕事や家族のこととなるとシャブの切れ目でも常識が通る。そしてヤクザ者らしくキップが良い。
普通の人間なら3万も貰うには気が引ける。まして妹はウソ話だ。しかし仲村は平気な顔をして3万円貰う。
「ありがとうございます。さすが開門さんはヤクザの大幹部ですね」
いつもの開門なら仲村のあからさまな褒め言葉に機嫌が良くなるのだが切れ目でしんどいのか喜ばなかった。
「ちょっと5分だけ待っててくれ。そしたら行っていいからよ」
開門はそう言ってワンボックスカーの運転席から後ろの席に移動してカーテンを閉めた。
切れ目でしんどいのだろう。それにしても自宅でゆっくりやればいいものと思いながらも5分くらいならと思い開門がシャブを入れ終わるのを待った。
開門はカーテン越しにゴソゴソした。しばらく経つと吐息を漏らした。シャブを体内に注射したのだろう。音だけで虫が騒ぐ。そしてこっちまでシャブで極まっている錯覚まで起こしそうになる。

5分もするとギランギランな目をした開門が運転席に移動した。
「仲ちゃん行ってもいいよ。待っててくれて悪かったな」
シャブが極まればちゃん付けしてやさしくなるのが開門のシャブ癖だ。
仲村は開門の車を下りると開門に頭を下げた。
「ありがとうございます」
開門は礼をする仲村に向かいまんべんの笑みを浮かべ左手を上げた。


一旦、自宅に戻り、大人のオモチャを持ってきてからホテルへ行きたかったが時間がかかるし面倒くさいのでそのままココロの待つホテルに向かった。
どうせ仲村は今日もシャブを我慢する。
シラフなら中年の頭がハゲかかった仲村など2回射精すればそれ以上は出来ないだろう。
一様はホテルまでの道のりを開門がついて来てないか何度も後ろを振り返り確認するが開門は着いて来てはいないようだ。
ホテルに付くとココロに電話をしてココロが待つホテルの部屋へと入った。

ラブホテルの部屋につくなりココロが仲村を迎えた。
ココロも早くシャブをやりたいのだろう。口にはしないものの仕草でなんとなくわかる。
その時、仲村の携帯電話が鳴った。名前を見ると開門だ。
仲村は人差し指を口の前につけココロに静かにしろとの合図いって電話に出た。
「仲ちゃん自宅に着いた?」
なんだこの開門という男は?仲村はホテルに来るまで何度も開門がつけて来ていないか確かめながら来た。おそらく付いては来ていないだろ。
「はい・・・どうしました」
「いやどうもしないよ。家族は大事だから心配で」
開門はそう言うと一方的に電話を切った。
仲村は開門がシャブでボケて訳の分からない電話をして来たのだと思いかけ直さなかった。

そして電話をマナーモードにするとココロにシャブを渡した。

迎夢 ( 2013/08/11(日) 03:56 )