堕落
56
開門が抜道の妻の店に来てシャブを回してくれと言ってきた日、
昼の仕事を終えて夕方から夜はいつものように高山密売所のアジトで待機していた。
韓国人留学生の李は相変わらず祖国の韓国の自慢話ばかりだ。
両親の自慢、兄弟の自慢と日本人なら親兄弟を他人に自慢など滅多にするもんじゃないが海を越えたアジアの朝鮮人は民族意識が日本人とは全く別物である。
日本人なら年長者を立てたり血縁者を大事にするという考えは朝鮮人には到底およばない。
これは文化や宗教、教育、徴兵制度があるからだろう。
生まれた時からアメリカの半植民地である平和ボケした仲村には到底、真似できないだろう。

「韓国人ハ仲間意識強イ、父アボジ言ッタコトハ絶対」
「李の両親は李が日本で悪い事してるの知ってるの?」
「知ラナイ、レストランデ仕事シテルト思ッテル」
「もし捕まったらどうする?」
「大丈夫、私シャブヤラナイカラ」
「シャブはやらなくても持てれば捕まるよ」
「大丈夫、ズットヤル訳ジャ無イ」
「李はシャブやらないのか?」
「ヤラナイ。コンナモノヤル奴ハ馬鹿」
「なんだよそれ」

「李は日本嫌いか?」
「アマリ好キジャナイ」
「何でだよ?」
「昔、韓国ハ日本カラ植民地サレタ、戦争デモイジメラレタ」
「植民地って言ったて昔だろうが。今の日本は平和で戦争なんか絶対にしないぞ」
「秀吉ノ時代カラ韓国イジメル」
「いつの話してるんだよ」

とにかく仲村と李は気が合った。
李は日本人はあまり好きではないらしいが仲村とは気が合うらしい。
仲村ともう1人の売人の沢田はというと最近は密売もやらず、密売所にいないことが多い。
なので昼間の仲村が抜道の妻で働いている時間帯は李が自らシャブを宅配しているようだ。
仲村は李の顔を見て苦笑いをした。
「沢田ハ馬鹿、シャブ辞メラレナイ。最近ハ仕事モ来ナイカラ俺ガ渡シニ行ク」
「沢田トイレデシャブヤルカラ、トイレ長イ」
仲村と李は沢田を馬鹿にして笑っていた。
とにかく李は面白い。仲村とはとても気があった。


いつもの様に宅配を何件か終わり密売所で待機していると仲村の携帯電話が鳴る。
相手は数時間前にシャブを回せと言って来た開門である。
「おい、今1人か?」
「違います」
「高山の所なんだろ?」
「そうです」
「な、なら他の者がいない場所に移動してくれ」
開門が電話口でそう言うので仲村はトイレに行って来ると言って席を立った。
「大丈夫ですよ。1人に成りました」
「仲村、お前絶対に他の奴に言うなよ」
「大丈夫ですよ」
「そうか。あのよさっきの件なんだけどよ。1g欲しいんだけど」
仲村はニヤ付いた。やはりシャブの催促の電話である。
「大丈夫ですよ。任せてください。回せるか聞いてみますんで」
「おお!そうか。頼むぞ。それと俺の名前は絶対に出すなよ。俺がシャブよこせって言ってるの他の奴に言ったら殺すぞ」
久さしぶりに聞いた開門の口癖の殺すぞだ。
「大丈夫ですよ。絶対にバレない様にしますんで」
「おう、直ぐに返事くれよ」
仲村は開門の電話を切り、今度は高山に電話した。
「ご苦労様です。今日1g欲しいんですけど良いですか?」
「1gっていつもなら02、03だけどどうしたんだ?」
「イヤちょっと欲しい人がいるんで」
「別に良いけどオッサンは絶対に自分で食うなよ」
「大丈夫ですよ。1gならいくらですか?」
「うーん・・・2万だな」
「わかりました。今日の給料無しで良いんで残りの金払いますよ」
「うーんじゃあ今日の給料引いて5000円で」
「そうですか。わかりました」
仲村は高山の電話を切ってまた開門に電話をする。
「どうだった?」
「大丈夫でしたよ」
「おお、そうか。お前仕事何時に終わるんだ?それとも今、持って来れるか?」
すぐにやりたい気持ちは痛いほど分かるが今は仕事中である。
「12時頃に終わるんで後2時間待ってください。仕事終わったら電話しますんで」
「おうわかった。12時頃だな。場所は何所だ?」
「豊島園の近くなんでどうすればいいですかね?」
「わかった。12時に豊島園の辺りだな」
開門はいつものように一方的に携帯電話を切った。


そのあとは時間が来るまで宅配である。
宅配といっても夜10時を過ぎるとあまり無い。
結局その日は開門から電話があったあとは宅配は無かったがその日も10回以上は宅配にいっている。
何だかんだで仲村は6時間で5g以上は売しているだろう。
昼も入れると高山薬局は月200gは密売してるだろう。
ボロイ商売である、電話を出るだけで月に600万円は売り上げている。
経費や人件費を引いても100万以上は余裕で儲けているだろう。
李には先ほど高山から電話があった。
李に5000円を渡しシャブと注射器入りの封筒を貰うと密売所を出て開門に電話をする。
「今終わりました」
「おう、そうか後何分くらいだ?」
「10分もすれば付きます」
「急いでくれよ。もう豊島園の所だからよ」
「えっ?もう着いてるんですか?はい急ぎます」
開門はシャブをやりたいばっかりにもう着いていた。
仲村は少し急いで豊島園の駐車場に向かった。

迎夢 ( 2013/08/11(日) 03:54 )