堕落
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高山は仲村にシャブを教えておいてシャブを売ってくれない。
かと言って開門に相談するのは怖い・・・案外、喜んでシャブをくれそうだがそこまでの勇気は無かった。
毎晩、抜道の妻に集金に来る。成田にはシャブが欲しいと相談するほど仲良くも無い。
抜道の妻の店長の福永にはココロと変態セックスをする為にシャブが欲しい等とは絶対に言えない。
どうしてもシャブの入手先が思いつかない。
外人から買う・・・リスクが大きい。
インターネットで買う・・・さすがにそこまで欲しくは無い。危険すぎる・・・

仲村は毎晩、高山に電話をしてシャブをねだった。
しかし高山は売ってくれない。
店に行くとシャブを使いココロをどうやって変態に持ち込もうか仲村は考えていた。
シャブを本当にやっているのかいないのかは分からないが仲村の頭の中ではココロは立派なポン中として出来上がっていた。


いつものように仕事が終わり。自宅に帰り高山にシャブの催促の電話をした。
「高山さんどうにか売ってくれませんかね。何があってもあなたから買ったとは言わないので」
「おっさんいい加減にしてくれよ。若頭の店で働いてる人間に許可無く。シャブをやれるわけ無いだろうが」
「そんなこと言わないでくださいよ。あなたが私をポン中にしたんじゃないですか?」
「とにかく無理だからな!若頭の許可ない限りシャブは無理だ」
「・・・わかりました」
そう言うと仲村は電話を切った。

とにかく開門の許可が無い限りシャブは難しそうである。
仲村は小ズル賢い男である。考えた。
そして開門に電話をした。
「おう、仲村どうした?」
「開門さん・・・その相談があるんですが・・・」
「なんだよ相談て・・言って見ろよ」
「その・・言いにくいんですが抜道の妻だけじゃ生活が苦しいので何でもいいので掛け持ちの仕事無いですか?」
「仕事って言ってもな・・・俺がやってるのは他に金貸しくらいだぞ。そんな事は仲村は出来ないだろう?」
たしかに仲村に取立てや集金など出来る訳が無かった。
「本当に迷惑かけませんので毎日でなくてもいいのでシャブの密売でも手伝わせてください」
仲村は思い切って言った。
「・・・・・・・」
開門は黙り込んだ。
「お願いします。絶対に警察に捕まる様な事があっても口は割りませんので」
「・・・・今すぐ返答は出来ない。ちょっと考えさせてくれ」
「わかりました」
仲村がそう言うと開門は黙り込み。携帯電話は切れた。

やはり無理なのだろうか?1時間くらい考えていると仲村の携帯電話が鳴った。名前を見ると高山だった。
「はい仲村です」
「おっさん、若頭になんて電話したんだ?」
「えっ?・・どうしてですか?何か有りましたか?」
「何かあったかって?若頭からシャブの密売手伝わせてやれって電話有ったぜ」
「・・・マジですか?」
「マジだよ。なんて電話したんだよ?」
「まあその、他にバイトみたいな事を紹介してくれと言ったんですがね・・・」
「それだけかよ?」
「そうですよ。マジで密売手伝えるんですか?」
「マジだよ。若頭が密売を手伝わせろって言うからよ」
「ところでシャブ屋って何するんですか?」
「何するって言われてもなぁ?・・・何もしないぜ。ウチは元締めだから売人に卸すだけだよ。そして許可無く縄張りで密売してるグループいたら襲ったりな・・・オッサンは本当に若頭に気に入られてるな普通なら絶対にありえないぜ。俺だって昔売人やってた頃はウチの組からシャブ買ってたんだぜ」
「そうなんですか!ちなみにどんなことするんですか?」
「それも明日説明する。成田の兄貴が一様はシャブのシノギを仕切ってるから明日でも電話かかってくると思うぜ」

次の日、仲村は期待と恐怖で仕事に向かった。
抜道の妻の仕事が終わる頃に店には成田と福永は一緒に来た。
「仲村さん、ウチの兄貴から話し聞いたんだけどアッチの仕事手伝うの?」
成田はそう言うと中指と親指をこすりシャブの隠語の様なしぐさを取った。
「はい。手伝わせてください」
「まあここは店の中だから後で説明するから福永ちょっと早いけど仲村さん連れてくぞ!」
そう言って仲村と成田は外へ出て仲村は成田のあとを追って着いて行った。

抜道の妻の店から徒歩3分ほどの雑居ビルの4階の部屋に入った。
ドアの前で立っていると鍵が開き高山が「ご苦労様です」と成田に言ってスリッパを出した。
部屋の中は玄関を映し出す防犯カメラとそのモニター、額に入った関東会の代紋に額に入った年寄りの写真と高山や開門達のボス井上龍雄の写真が飾られていた。
神棚に「龍道組」と書かれた提灯。一見してヤクザの事務所だった。

迎夢 ( 2013/08/11(日) 03:50 )