堕落
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サラリーマン時代は毎朝、満員電車に乗っていたが電車に乗る事など3ヶ月ぶりであろう。数ヶ月前は仲村も毎日、地下鉄の世話になっていた。まさか地下鉄を乗り継ぎ麻薬の下見に向かうなど夢にも思っていなかった。
深夜8時と言う事もあり、電車の中は混雑は無かった。
電車に揺られていると何だか異様にむなしくなって来た。これから向かう先は東京の新宿おそらくは日本一の繁華街だ。それも理由はシャブ欲しさにだ。

電車に揺られ新宿駅に着いた。
新宿駅など何年ぶりだろう。東京に移り住んで早いもので15年、サラリーマン時代に何度か歌舞伎町には遊びに来た事があるが売人を探しに来るなど思っても見なかった。
仲村は新宿駅東口を出て歌舞伎町に向かった。おそらくは10年ぶり位であろう。
都知事の新宿洗浄作戦により歌舞伎町からは売人はおろかヤクザまでもが姿を消した。売人は防犯カメラの設置でいなくなり。ヤクザに関しては都条例で3人以上で歩くと罰せられると言う滅茶苦茶な条例ができて、歌舞伎町からはヤクザまでもが姿を消した。
相変わらずネオンはギラギラで眩しいが。今では風俗の呼び込みすら数えるほどしかいない。露天で物を売る外人まで居なくなっている売人どころではない。
仲村は歌舞伎町を一回りしたが売人らしき外人には一度も出会わなかった。売人など簡単に見つかるわけが無いのだ。

大久保辺りなら居るのだろうか?仲村は歌舞伎町の隣の大久保へ向かった。
大久保とは在日朝鮮人を筆頭に、朝鮮人、中国人、フィリピン人などのアジア人が多く住んでる所だ。歌舞伎町のような繁華街ではないが歌舞伎町で働いている外人が多くすむコリアンタウンのようなところだ。
大久保は歌舞伎町とは違い、相変わらず犯罪くさいく歌舞伎町の隣というのにハングル文字が並ぶ飲食店と風俗店ばかりの説明しがたい町だ。
大通りから細い路地に入るとロシアと思われる白人娼婦達が数人立っていた。
ここなら売人がいるかもしれない。仲村は裏路地を入りだした。
「オニイサン、マスタージドウデスカ?」
「60分2マン、泊マリ5マンエン」
娼婦
ロスケ
は仲村に話しかけてくる。しかし仲村は女を抱きに来たのではない。キマっていればまだしもオマンコよりシャブが欲しいのだ。
大久保
ここ
なら売人がいるかも知れない。大久保の町はそのような町である。
細い路地をしばらく歩いていると怪しい外人が自転車に乗りながら立っている。
まさか麻薬売人のイラン人か?仲村はそのイラン人と思われる人を見つめた。
イラン人も帽子を深くかぶりサングラスをしている、いかにも挙動不審な仲村を見ている。
仲村はイラン人を見続けていた。イラン人も仲村を見つめながら小さくうなづいた。
間違いないこいつは売人だ。仲村は確信するとうなづき返しイラン人に近づいていった。
「何サガシテル?」


迎夢 ( 2013/07/31(水) 10:23 )