堕落
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「他に引くところないの?」
「俺はそこしか知らないんだ」
「じゃあもうシャブないの?」
「誰か知り合いに売ってくれる人とかいないのか?」
仲村はそう言うと、さっきまで猫撫で声のレナは声を荒げた
「いたらあんたみたいなハゲと会わないわよ・・・じゃあもう電話してくるな、ハゲ」
「ガチャ・・・ツーツーツー」
レナは電話を切った。ホントに性格の悪いやつだ。シャブが無いと分かった途端に人が変わってしまった。
所詮、仲村はシャブが有ったから付き合っていただけなのだ。シャブが無い仲村など歯の欠けた中年のレナからですらお払い箱なのだ。
それほど仲村は魅力の無い男なのだ。しかし仲村も困っていた。シャブがもう手に入らないのだ。
どうすれば良いのか考えたがなかなかいい案が浮かばない。
インターネットで買う、いやいやリスクが高すぎる。それにどんな物が来るか分からない。
知り合いにヤクザでもいれば格安で上物が手に入るのだろうが仲村にそんな怖い知り合いはいない。
電車を乗り継ぎ繁華街まで行き、外人の売人から買う。
確かにテレビなどでイラン人が麻薬の密売をしているのが問題になったりしている都内で治安が悪いようなところで有名なところと言えば新宿だ。
新宿駅近郊には歌舞伎町、大久保、少し行くと代々木公園と都内では何かと問題視される場所が多い。
シャブの売人がいるかも知れない。仲村は公園を出ると地下鉄へ向かった。

サラリーマン時代は毎朝、満員電車に乗っていたが電車に乗る事など3ヶ月ぶりであろう。数ヶ月前は仲村も毎日、地下鉄の世話になっていた。まさか地下鉄を乗り継ぎ麻薬の下見に向かうなど夢にも思っていなかった。
深夜8時と言う事もあり、電車の中は混雑もないままJR新宿東口へと向かった。

迎夢 ( 2013/07/31(水) 10:22 )