Case.2
07
和希に悟られないように後をつけていくと、和希はある部屋をノックし、入っていった。
それは理科準備室だった。
これはまさか、本当に進路の相談で?と罪悪感を感じたが、同時にわざわざ準備室までいってやるものか?とも思った。
鍵が閉まる音がしたため、入ることは出来ない。おまけに黒いカーテンのため、見ることも出来ないが、天は私に味方をしたのか。隣の理科室は鍵が開いていた。電気もついておらず、カーテンも閉まっていたため、中に入ってすぐに扉を閉めてしまえば外からも分からないはず。
音を鳴らさないように中へ入ると、準備室の扉の近くへ座った。


(あれ、この声って・・・)


中からは荒い息遣いと共に、和希と女性の声が聞こえてきた。
扉の小窓にカーテンはかかっていない。恐る恐る、中を覗くと、衝撃の光景に私は腰を抜かしてしまった。


「倉持先生・・・」


倉持先生と和希が抱き合ってキスをしていた。一瞬しか見えなかったが、状況ははっきりした。
思えば、木曜日は昼休み前に理科の授業があり、倉持先生はここで授業を受け持っている。和希も私もこの授業は受けていない。という事は、和希が来るまで待っているという事に。
色々と合点のいった私は突撃したかったが、タイミングが分からずにモタモタしていた。
と、その時だった。私はとっさに自衛隊のようなダイブで長机の影に隠れた。理科室の扉が開く音がしたのだ。どうやったらこんな動きができたのか今でも分からないのだが、まさか他にも?と思ったら体が勝手に動いたのだ。


(え、嘘、どういう事・・・)


入ってきたのは平川先生だった。
真っ直ぐ理科準備室の扉へ向かうと、ポケットからスマートフォンを取り出した。


(あっ!)


スマートフォンからは録画開始の音が。倉持先生と和希のセックスを録画しているのだが、平川先生はまるで、これを知っていたかのような動きだった。
真っ直ぐ理科準備室に向かったため、私の存在には気付いていないようだが、私はここからどうやって逃げ出せばいいのか。
平川先生に見つかったら別の意味で面倒になりそうだし、かといって逃げ出す手立てがない。
一番危ないのは私ではないのか、そう思いながら平川先生の動きを見ていると、平川先生はスマートフォンを戻すと、今度はカメラで写真を撮り出した。
証拠は徹底的に集めるつもりらしい。

平川先生が入ってきて約10分、そろそろこちらの体が限界になってきたところで、平川先生は理科準備室に入っていった。


「倉持先生、これはどういう事でしょうか?」

「はぁ、また観られちゃった」

「生徒との性行為、何を考えてらっしゃるんでしょうかね?」


聞こえたのはそこだけだった。
どうやら口ぶりからして、和希はそこにはいないようだ。今ごろ呑気に昼御飯を食べにいっているだろう。
やっとの思いで扉に戻ると、更に衝撃の光景が広がっていた。


(平川先生?倉持先生?どういう事?)


そこには平川先生のおちんちんをフェラする倉持先生が映っていた。何がなんだか分からなくなってきた私だが、ここで私は突如、あの時観たAVの内容を思い出した。


黙ってあげるから、自分にも同じことをして。


私の本性が出てきてしまったのかもしれない。
私はスマートフォンを取り出すと、準備室の小窓からカメラを向け、録画を始めた。

壮流 ( 2019/10/24(木) 22:59 )