05
時刻は深夜の2時半。
俺と玲奈と姉貴は全員別の部屋で寝ているのだが、ちょうど俺の眠りが浅くなった瞬間だった。
部屋のドアが開く音が聴こえたのだ。
玲奈がこっそり入ってきたか。寝たふりをして様子を見る事にしたのだが、ゆっくりと近付いてきてガサゴソと何か物音をさせている。これは玲奈か?と思って振り向こうとしたその瞬間だった。
「雄介ぇぇん」
「!!」
これは違う。姉貴だった。思いっきり抱き付いてきたのだ。
「ちょ、姉貴!・・・」
「ゆ、ゆぅすけっ、大好きぃ」
「なん、ちょ、んん!」
ちらっと見えたが、姉貴は下着姿だった。ガサゴソした音の正体は服を脱ぐ音だったのだ。
いきなり抱き付いてきたと思えば今度は俺の口の中に舌を入れてきた。この症状はヤバイ、俺はなんとかして姉貴を引き剥がした。
「やめろ!はぁ、はぁ」
「なんでぇ、雄介、お姉ちゃんとエッチしよぅよぉ」
「嫌だよ、姉貴とエッチだなんて気持ち悪い」
「なんでよぉ。あ、わかった、もう大人だから恥ずかしいんでしょぉ。由紀姉って昔みたいに甘えてきていいんだよ?」
「ふざけるな、由紀姉とは呼ぶかもしれないけど、俺はもう大人だ。むしろそうやって甘える方が気持ち悪くて恥ずかしいわ」
「なんで、なんでぇ・・・なんでよぉぉ」
泣き出した姉貴。だがそれを慰める気にはならなかった。今日の晩飯の前に玲奈から見せてもらった痕跡を見て分かってはいたが、もう半日も我慢できないのか。
無闇に睡眠薬を飲ませたりするより、力ずくで押さえつけないとどうしようもないか。
玲奈を呼びたかったが、ここで玲奈を起こしたくはなかった。
「姉貴、頼むから理解してくれよ。もうヤクは手を出さないって誓って、病院入っただろ?」
「なんで怒るのぉぉ」
「玲奈から見せてもらったよ。昨日の夜、またヤクに手出したんだろ?それで遊んできたんだろ?」
「・・・うん、遊んだ。遊んじゃった」
「もうダメなんだよ。姉貴は自分の理性すら制御できないんだよ。だからこうして俺とセックスしようとしたんだ」
「わかってるよぉ!!」
「!!」
「でもね、もうどうしようもできないの・・・心がダメと言っても体が止まらないの・・・」
「・・・姉貴、またしばらく入院だ。今度は完全に治るまで外出も一切許さないから」
「なんで・・・なんでよ・・・病院の中にずっといたくないよぉ」
「ヤクに手を出さないと100%信用できない限り、病院から出られないように話をつけておくから。俺と玲奈とも病院でしか会えないからな」
「やだぁぁよおぉぉ!!!」
泣き叫んだと思えば、ついに下着を自分で剥ぎ取り、姉貴は俺に抱き付いて、いや、襲いかかってきた。言葉通り、もう体は止まらないのだろう。
「エッチしよ、エッチしよぅよ!お姉ちゃんと気持ちいい事したいでしょ!?雄介はお姉ちゃん大好きだったもんねぇ!」
「気持ち悪いっつってんだろ!」
「ほら、ほらぁ!もうお姉ちゃん濡れてるよぉぉ!触ってみてぇ」
「やめろってぇ!!」
もうどうしようもない。この手段だけは出たくなかったが、やるしかなかった。
「くそっ!」
「いたっ!!」
姉貴の顔に平手打ちを食らわせ、怯んだ隙に部屋の電気をつけた。そして姉貴の背中に乗り、マウントポジションをとると腕を押さえた。
「雄介、痛いよぉ」
「俺だってこうはしたくなかったよ」
「あ、もしかして、この状態からお姉ちゃんをバックで気持ちよくしてくれるの?」
「ふざけんな!」
「してくれないの・・・?」
折れてはダメだ。絶対に折れちゃならない、頑固にならなければならない場面も、人生にはある。
まさに今がその時だ。
「本当は寝たいんだよ、でもね、体が言うことを聞いてくれないの・・・エッチしたくて体が勝手に熱くなって・・・」
「だからもう、明日入院させる」
「・・・ねぇ、入院させられるんだったらさ、一回だけでいいから、エッチしない?お姉ちゃんと雄介でさ?」
「絶対に嫌だ」
「なんでぇ、入院したらしばらく会えないんだよ?エッチくらいいいじゃぁん」
「嫌なものは嫌だ」
「なんでよぉ、なんで、なんでぇぇ!!!」
マウントポジションは意地でも崩さなかった。たまに背中をかかとが直撃するが、その痛みにも耐えた。泣き喚く姉貴を押さえていると、そこに玲奈もやってきた。
流石にこれだけ騒げば起きてくるだろう。
「お兄ちゃん!」
「ああ悪い、起こしちゃったな」
「由紀姉どうするの!?」
「近所迷惑だからとりあえず押さえつけとくわ。タオルとか持ってきて、口を押さえて手と足を縛ろう。もうそれしかない」
正直、強行手段には出たくなかった。だがこうでもしなければ収拾がつかない。
手足を縛り、口を押さえても暴れる姉貴を部屋の寝床に引きずりこむと、俺と玲奈は眠りについた。