06
「はぁ、はぁ、美音さん、気絶しちゃいましたね・・・」
「今までずっとそうやってきたんでしょ?女をたぶらかして、その気にさせてセックスしたら捨てて」
「・・・愛なんて、なかったですからねぇ」
「あたしにはあるわ。生き血をくれる人なら誰でもいいの。こんなに沢山の血をくれたのは、あなたが初めてなのよ・・・」
未央奈に対しても愛はなかった。
今、自分の愛を伝え、感じたいのは祐唯だけだ。しかしそうもいかないのが今の自分の立場。
この一夜で未央奈、美音に別れを告げ、祐唯を探したい。
翔は水を飲むと、指に切り傷を入れようとナイフを手にとった。
「あぁ、血が、まだ飲めるのねぇ」
「・・・未央奈さん、ちょっと待ってください」
「えぇ・・・なんで?」
「・・・このホテルから出ましょうか、なんだか嫌な予感がします」
翔と未央奈は服を着ると、美音にシーツを掛け、三人分の宿泊費と鍵を置いて外に出た。
翔に導かれるままに未央奈もついていき、しばらく歩き続けた。
「どこに行くの?」
「どこに行きましょう、とにかくあのホテルから離れないと」
ホテルを出てから歩き続け、よがる未央奈に切り傷をつけた指を差し出し、気が付けば朝日が差す時間帯になってきていた。
翔と未央奈は公園のベンチに座って日の光を観ていた。
「ねぇ、その子にそんなに会いたいの?」
「・・・ええ、だからあなたとも、美音さんとも、玲香さんとも別れを告げたんです。それなのになぜあなた達は」
「私は血が欲しいのよ、その血が、私に生きる実感をくれるのっ」
「自分にも理由があります、祐唯さんは、自分に生きる理由と、感情を与えてくれました」
「なら決まりじゃない、その子に会いに行きましょ?こういう時はね、初めて会った場所に行くと会えるものよ」
「初めて・・・あっ」
祐唯と初めて会った場所。それはこの公園からそう遠くはない。
翔は指に包帯を巻きながら、あの場所へと向かった。