04
「いいですか、とにかく自分から離れてください。自分はあなたと関係を持とうなどとは思っていません」
「でもぉ、あたしの縄をほどいたのはあなたでしょ?責任とってもらわないとダメじゃない」
「自縛癖の女をたぶらかすなんて。あなたってイカれてる・・・」
未央奈、美音にベッタリと腕を取られた。字で書くなら“取り憑かれた”と言ってもいいだろう。
こんな危険な二人に加えて玲香まで連れて歩くことはできない。
下車した時間も遅いため、翔は何としても穏便に事を済まそうと、未央奈、美音をとある場所へ連れていった。
「ここは何なの?」
「・・・ずっと昔、自分が隠れ住んでいた廃墟です。組織を抜け出してどこにも身を潜める場所がなかった頃に、ここで寝ていました」
「そうなの・・・暗罪黒兎の名前が生きていた頃に・・・」
「その名前は禁止です、とにかくここで今日は寝てください」
「待ってるわよ・・・早く縄をほどきに戻ってきてね・・・」
そして急いで玲香の元へ戻ると、翔は高架下で玲香に告げた。
「あなたを危険には晒せません。すぐに自分との関係を断ちましょう」
「・・・そんなに嫌なの?」
「自分は犯罪者です。あなたと同じ生き方をしても、自分の事を誰も許してくれないんです。だからあなたと一緒にはいられません」
「理由になってない・・・」
「ええ、理由なんてそんなものばかりです。大概の理由なんて理解されません。特に自分の場合は」
「ただの自分勝手でしょ、そんなの・・・」
「自分勝手でも、通さなければいけない事があるんです」
泣き出す玲香に対して冷たい態度しかとらない翔。玲香を想っての事なのだろうが、受け入れられるはずもなかった。
「あなたの人生から、自分の記憶を全て消してください。名前も顔も、時間も」
「そんなの・・・・!」
「あ、お巡りさん!こっちです、こっちから人の声がして・・・」
「!」
「気付かれたか・・・」
「待って、行かないで!」
「・・・さよなら」
通報を受けてやってきた警官が見たものは、泣き崩れた玲香だけ。翔の姿はもうなかった。
「すみません・・・もう、あなたの中に、自分はいてはいけない」
「あの子を捨ててきたの?」
「・・・ええ」
「結構酷な事をするのね」
「玲香さんと一緒にいると、玲香さんの人生が狂ってしまう。だから、そうなる前になんとしても・・・」
「・・・やっぱ、あなたってイカれてる、暗罪黒兎さん」
翔は何も言わずに服を脱ぐと、未央奈、美音を抱き寄せた。
「縄をほどいてくれる・・・?」
「早く血を飲ませて・・・」
(祐唯さん、もう少しで、あなたの元にたどり着ける・・・だからまずは・・・)