02
「それは・・・本物、ですか」
「本物だよ」
「先程ぶつかった時、人の体にしては妙な違和感があったんですが、それが正体でしたか」
「これがないと気が狂っちゃうの」
美音の体には縄が巻かれていた。
下着もつけておらず、ポロシャツを脱げば縄が巻かれた体が露になる。小柄な割には、かなりと言っても良いほど大きな胸。縄の痕が身体中に残っており、どうやら常時縄を巻いているようだ。
「自縛癖、ってやつ。あるでしょ、誰しも自分だけの癖って」
「生憎、自分にはありませんねぇ」
「気付いてないだけ、じゃないの?足フェチとか、臭いフェチとか、それも一つの癖でしょ。だったらあるに決まってるよ」
「ふむ、何が癖なのか・・・って、あの?」
美音は翔に顔を近づけた。身長が20cm以上も違うとどうしてもこうなるのだが、美音から目線を反らせば縄で縛られた柔らかい肌の豊満な体が目に入る。
「ねぇあんた、どっかで見たことあるような気がするんだけど・・・気のせい?」
「!」
気づかれたか。翔は美音の口を封じようとしたが、手を出す前に美音は身を退いた。
「気のせいだよね。流石に。暗罪黒兎なわけがないよね」
「・・・ええ、勿論」
「本物なら多分今頃、私のことどうしてるか分かんないし」
暗罪黒兎のイメージは極悪だった。
その本人が目の前にいるのだが、美音は気のせいで済ませてしまった。
いっそ、本人だとばらして、美音をレイプしまおうかと思ったが、列車では逃げ場がない。騒がれたら終わりだ。
「でもあんた、うちの体見て興奮したでしょ?ヤりたいって、思ったでしょ?」
「え、あ、いや、それは」
「まさか、そんなめちゃくちゃイケメンなのに童貞なの?」
「え、う、んんと・・・」
「・・・じゃ、童貞ならさ、うちの縄ほどいてくれない?」
「え?」
「縛られた状態は好き。だからこれほどかれたらおかしくなっちゃう。でもこれをほどいてって私が頼む時はね、そういうアピールなの」
「・・・」
「ね、ほどいてくれない?」
翔は手が途中まで伸びるが、そこから先へ進まなかった。
上半身裸で縄に縛られた女性からのセックスアピール。思わず気後れしてしまう。だがそこは真の正体、暗罪黒兎。
誘われて断るはずがなかった。
「こうか・・・しかしこれを一人でやるなんて信じがたいですねぇ」
「誰かに頼んでも、やってくれる人いないんだもん。自分でやるしかないでしょ」
「まぁ、それをやりたがるのはそういうセックスが好きな男か、癖を持っているか、そのどちらかですね」
「あんたからはね、悪い匂いが漂ってくるの。しかも鼻をつんざくような、強い匂いがね」
もしかすると、本当は正体に気づいているのだろうか。
その上で犯される事を望むのなら、美音の癖は本物だ。なら尚更、美音の口を封じなければならない。
だが美音にそれをして良いのだろうか。旅の供にする事も考えたが、既に特殊性癖を持つ女がいるし、一方的なラブコールを送る女もいる。
「いや、いいか」
「なにが?」
考えるのは後でいい。翔は縄をほどいた美音の口を押さえ、その豊満な胸を揉んだ。