うさぎ男 - case.8 向井地美音
01
祐唯の元へ向かう。新たな逃亡、いや、旅が始まったが、翔は疲れきっていた。どの道終点に着くまで時間はあるため、未央奈も玲香も寝ていた。
そんな中、翔はお手洗いへ行くため二つほど車両を移動した。自分の席のある車両にお手洗いはなかった為移動しなければどうしようもなかったのだ。
用を足した翔が外へ出たその時、翔は女性とぶつかった。


「あ、ごめんなさい」

「いえいえ」

とても小柄な女性だったが、子供というわけではなかった。翔の身長が高いためにそう見えただけである。
しかしこの女性とぶつかった瞬間、翔は何やら違和感を感じた。
女性の二の腕あたりがぶつかったのだが、人の体にしては妙に硬いものに触れたような感触だったからだ。
翔は女性に気付かれないようにもう一度確認した。


(二の腕・・・いや、腹回りも妙に体つきが歪というか・・・)


シャツの上からでも違和感を感じる彼女の体つき。翔はさらに距離を置いたまま後を追っていったのだが、突然、女性は足を止めた。


「もしかして、うちの体、気づきました?」

「!」

「気付いてくれて、しかも追いかけてきてくれた人はあなたが初めてです」

「・・・そ、そうですか」

「・・・ここなら誰もいないですから、ちょっとお話しませんか?」



彼女の名前は向井地美音と言い、普段は男性人口の多い仕事場にいるという。その仕事場の男性には数人、美音の歪な体つきを気にした者がいたようだが、翔のような男性はいなかったらしい。どうやら気付いて追いかけられるのが嬉しいらしい。


「めっちゃイケメンな男の人に追いかけられたの超嬉しい、特別にこの体見せたいんですけど、どうしますか?」


「いや、ちょっと待ってください、自分の頭が追い付きません」

「いいじゃないですか、この秘密を打ち明けるの滅多にないんですよ?いいんですか?私の秘密」

「全く聞いてくれませんね・・・」

美音に手を引かれ、先程のお手洗いに戻ると、ドアと鍵を閉めた。
かなりの密着具合のため、妙な硬さがよく伝わる。美音は躊躇する事なくシャツを脱ぎ、中のポロシャツのボタンも外した。

「え?それは・・・」

「・・・これ、秘密ですよ?」

ポロシャツから見える胸の谷間。元々胸が大きいのだろうが、歪な体つきに見えた理由は別にあった。

壮流 ( 2017/11/21(火) 02:24 )