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「ねえ渉さん、これからどうするの・・・?」
「・・・その名前も呼ばない方がいいでしょう」
「あ・・・でも、そしたら・・・」
「翔(かける)にしましょう。今後はそれでお願いします」
「か、翔さん・・・で、このまま、どこまで行くの?」
「・・・祐唯さんのところまで」
「何があったの?まさか逃げられたわけじゃ・・・」
「・・・彼女に会いに行く、ただそれだけでいいんです。理由など必要ありません。そしてさっきから何か分からないですが、妙な視線を感じるんですが」
「え?」
「玲香さん、ちょっとここで待っててください」
翔は席を立つと、車両の前側に進んで連結部分の通路に立った。
ここなら誰にも見えない。すると、翔が出てから5分ほどして後ろの方から誰かが翔の元へ向かった。
なんとその人は堀未央奈だった。玲香の近くまでくると、玲香に笑顔で会釈をして連結部分へ出ていった。
「ねえねえ、あたしだけに血をくれるんじゃなかったのぉ」
「未央奈さんだったんですね、さっきから付いてきていたのは」
「あの血が忘れられないんだもん、今朝起きてあなたがいなかったのにびっくりしたわ」
「泊まっていられませんでしたからねぇ」
「あの血が欲しくて・・・ムズムズしちゃって、そしたら駅前で事件が起きたじゃない。犯人であるあなたを追いかけて、列車に乗ったのよ」
「全く・・・」
「また旅に出るんでしょ、楽しそうだから私もついていくわ。その代わり、また血を貰うわよぉ」
「わかりました、電車から降りたら血をあげましょう。それまで我慢して寝ていてください」
未央奈、翔は時間をおいて席へ戻った。玲香は不安な顔で翔に問い詰めた。
「あの、大丈夫だった?」
「ええ、大丈夫です」
祐唯の元へたどり着くのはいつなのか。翔、玲香、未央奈の三人旅は始まった。