07
ネオンが煌めいていた街も眠りについたのか、ほとんどの建物が暗かった。
渉は祐唯に出会った日を思い返していた。ネオンが輝いていれば、ほぼ完璧な再現になったかもしれない。
ストリートパフォーマンスをしていた彼女がいたのは、この百貨店のような大きな建物。
純粋に歌が好きだった彼女は、歌声もその心のように透き通っていた。
もう一度、その歌と顔が見たい。渉はベンチを見つけると、座って下を向いていた。
歩いている人はいるが、そんなにいない。ところがしばらく座っていると、渉に近づいてくる気配がある。渉はそれから目を背けた。
「やっほー、また会えたね」
「あなたは・・・神崎の愛人の」
「あんたが殺しちゃったから、もうフリーよ、ふん」
数日前に殺した神崎の愛人の、小嶋陽菜。だが以前とは違い、敵意を見せてくる様子はなかった。
「こんな夜まで起きてるなんてね、女の子でも探してたの?」
「・・・まあ、間違ってはいませんと言っておきましょう」
「間違ってないんだ・・・?」
「・・・あなたこそ、何をしてるんですか」
「んー、もう一度あんたに会いたくて、って言うか」
「嘘はいけません」
「んー、じゃ今、その理由にする。ほんとは何もないからプラプラ歩いてただけなんだけどさぁ」
陽菜に手を取られ、結局一緒に歩くことになった。渉は周りを気にしながら、陽菜から逃げるチャンスを伺った。
「ねえねえ、あの子見つかった?」
「・・・見つかってません、あなたには渡しません」
「もー、信用してくれてもいいじゃない。もうフリーだって、さっき言ったでしょ」
「フリーだからですよ」
「もう。でもフリーって事はさ?」
「・・・?」
「私の事、自由にしてくれてもいいんだけどなぁ?」
「興味がありません」
「セックスだって許してあげちゃうかもしれないのに、なぁ?」
「っ!?ぐぅっ!!!?」
苛立った渉は陽菜から離れようとしたが、その時、渉は頭と胸に締め付けられるような痛みを感じた。
だがこの感覚は以前にも感じた。そう、玲香、麻衣の時の、あの感覚。
性欲に支配される、あの感覚だ。
「・・・大丈夫?苦しいの?」
「はぁ、はぁ、そ、そっちの道に行きましょうか・・・」
人通りの全く無い道。渉は陽菜に狙いを定めた。
「ほら、手を貸して、っあっ!!」
「はぁ、はぁ・・・我慢できませんので・・・失礼します」
「ちょ、え!こんなとこで!」