case.7 堀未央奈
03
時刻は夜の8時。未央奈と渉は二人で夜の街をこそこそと進む。
痴女がいなくなった代わりに組んだ血女。考えてみれば未央奈も、血を欲すという意味で殺人や傷害事件を繰り返してきた、大犯罪者なのだ。
互いに味方はいない、四面楚歌の状況下にありながら、未央奈は楽しんでいた。


「そんなに私達を捕まえたいのかしら、どこにでも警察がいるわね」

「顔を隠す手段はむしろバレそうな気もしますねぇ、出来れば車でも拝借して移動したいですが」

「途中で検問にでも引っ掛かるんじゃないかしら、裏道だけ進むのもちょっと危険だし」

「未央奈さんは血が欲しくなって警察官を刺しそうですしね」

「嬉しい事言ってくれるわね、そうよ、血が足りないと私・・・」

「油断できませんね」

「うふぅ、でもあなたの血だったら3日はエネルギッシュでいられるわ・・・あの味を思い出したら、ああもう・・・」

「帰ってからですよ、未央奈さん」

「仕方ないでしょ、あんな美味しい血なら・・・」



興奮した未央奈を落ち着かせるだけで、逃げるためのエネルギーまで使いそうである。渉は信号が青になったのを確認すると、無理矢理未央奈の手を引っ張って歩道を渡った。
ネオンの光輝く街を歩くのは人混みに紛れて警察を撒きやすいが、離れると目立つ。
しかもこのあたり、妙にその筋の男達が多く、違法な客引きに引っ掛かることはないのかが心配だ。
名前がバレたら通報もあり得る為、未央奈以外とは関わらない。そう、決めていた矢先であった。


「や!結構です!」

「まあまあ、いいじゃん別にさ、ちょっとだけだからさ?」

「やだ、パパが待ってるんだから、早く帰らないといけないんです」

「パパ?大丈夫だよ、パパに怒られないようにすぐ終わらせるからさ、ね、ちょっとだけ!」


あれも違法な客引きか。絡まれている女性は20代前半と言ったところ。
関わらないようにとは言ったが、目の前で見てしまっては仕方ない。
渉は顔を隠して近づいた。


「やめてよ、ちょ・・・えっ?」

「あ?何、あんた」

「・・・嫌だと言ってるなら、離してあげましょう」

「あ?俺らがこいつに嫌がってる事したってか?いつした?というか見たのかよ?」

「はっきり見ていました・・・?」

「ん?」


男の二の腕を誰かが掴んだ。その方を向くと、黒いスーツを着たガタイの良い男が睨みをきかせていた。


「何だよテメェ?」

「お嬢さんを逃がしてやれ」

「なんだ、さっきからどいつもこいつも・・・」

「あんたも離れろ」

「・・・ちっ」



男は何もせず、その場を去っていった。




「大丈夫か、綾巴」

「うん」

壮流 ( 2017/08/23(水) 21:03 )