01
「ねぇこれ見て、殺人事件のやつ」
「・・・たった数日で凄い事になりましたねえ」
顔を隠しながら新聞を読む。内容は数日前の殺人事件の現状と進展。暗罪黒兎の名前も大きく載っており、いよいよこの街が危険地帯になってきた。
咲良は街からの脱出に付き合ってくれるそうだが、いつかは離別させなければ彼女も危険になる。
四面楚歌の状態にある以上、逃げ場所は無い。
「渉さんて、どんな犯罪をしたんですか?」
「・・・それは言えませんね」
「街をあげて警察に張られてるなんて、相当ヤバイ人じゃないとならないじゃないですか」
「・・・それを聞いたら、あなたも共犯になります。従って、話すことはできません」
「でも、こうして一緒に行動してる時点で既に共犯になってるから、話してくれても・・・」
「・・・話せません」
咲良との関係は限りなく少なく。これが彼女のためだ。
隠れながら移動を繰り返し、時刻は午後四時を回ったその時、咲良は渉のコートの裾に何かが付いているのに気づき、それを手にとった。
「渉さん、コートにこんなものが付いてましたけど・・・」
「え?」
「何だかこれは・・・電話番号みたいな」
「名前などは?」
「電話番号しか書いてないです」
「・・・いや、ちょっと待ってください」
「え?」
「コートの裾に付いてたんですよね・・・だとしたら」
「え、心当たりがあるんですか」
「勘ですが、一人思い当たる人物がいますね」
渉はその番号に電話をかけた。