06
「ソフトクリームでも食べる?」
「・・・食べる」
飛鳥がようやく言葉を発してくれるようになり、おまけに差し出されたソフトクリームも受け取ってくれるようになってくれた。
言葉や表情に、まだ心があるようには見えないが。
「鼻についてるよ」
「あ・・・」
飛鳥は指ですくって口に入れると、今度は上から食べ始めた。
ソフトクリームを食べている姿は、純粋な子供そのもの。今までそんな子供を幾人と売り飛ばしてきたが、車に乗せて海へ行くなど、そういう行動を起こすのは初めてであった。
しかも奇跡的に、飛鳥が感情を以て応えてくれた。
黒兎の心には、飛鳥を売る事に対しとてつもなく大きな感情が重くのしかかった。
「一つ、いいかな」
「ん?なに?」
「もう一つ、連れていきたい場所があるんだ。いいかな」
「いいよ」
迷わずOKが出た。飛鳥は少なからず黒兎に心を開いている。
「どこ?」
「それは着くまで話せないな」