case.6 齋藤飛鳥
05
飛鳥が来てから三日。黒兎は突然、飛鳥を連れて外へ出た。


「闇罪さん、どういう了見で」

「そうですねぇ、彼女は今までのようには出来ませんから」


何処へともなく、車を走らせる。飛鳥は後ろで脱け殻のように横たわっていた。行き先は誰にも伝えておらず、勿論飛鳥にも言わずに連れ出してきた。
途中でコンビニに立ち寄っては飲み物まで買い、高速道路まで進んでは道の駅で停まり、昼食までご馳走した。だがしかし。

「・・・」

「手も、動かしませんか」



結局、飛鳥の分まで全て平らげて、黒兎はまた運転を再開した。相変わらず飛鳥は横たわっており、そのうち寝てしまった。


「・・・この寝顔の方が幸せそうに見えるとは」

事故で親族を丸ごと亡くした彼女の心は壊れている。虚空を見つめる姿があまりにも空しいため、そんな考えを持たない瞬間、つまり寝ている間こそ、素顔を見られる瞬間だ。
黒兎は思い出す事があるようで、苦笑いをしながら運転を続けた。



道の駅から走り出して約二時間。着いたのは海開きをしたばかりの砂浜であった。
家族連れ、学生の集団、海水浴を楽しむ人で賑わう砂浜を、二人は駐車場から立って見つめていた。


「家族を失ったという点では、君と似ている。自分も家族を丸々失ってね」

「・・・」

「敵対する組織の集団が憂さ晴らしにと、自分の家族を殺したんだよ。だがそれで終わらなかったのが悪循環の始まりさ」

「・・・」

「あの時、自分は何も考えずに男達を殺していた。目には目をというわけではないけど、何もかも爆破させて全てを消し去った。お陰で、今や中身の無い人間になってしまった」

「・・・」

「君にはそんな人間にはなってほしくない。だから自分は考えがある。聞いてくれるかな」

「・・・」


そうは言うが、飛鳥は無表情。結局無駄話であった、そう思った瞬間。

「・・・なに、その考えって」

壮流 ( 2017/06/12(月) 00:52 )