01
「どうでしょうかねぇ」
「似合いますよ、かっこいいじゃないですか!」
三日間の長旅をしてきた二人は、ようやく大きな街へ辿り着いた。そこで新しい服を買い、印象が変わった二人。ただ、渉の黒いロングコート、サングラス、ハットは変わらなかったため、コートを閉じてしまうとほとんど分からなかった。
「やっぱりうちが隣にいないと、白兎夜さん不審者ですよ」
「そんな事はありません」
「不審者ですー」
佑唯と渉の仲は家族と呼んでもいいほどに深まっていた。
二人旅を始めて1か月、常に一緒に並んで歩いてきた二人はただの同行者ではなかった。
この旅が終わったら佑唯はどうするのか。帰るのかと考えた時、渉はとても寂しい感情が芽生えた。
佑唯がいなくなったら、自分はどうしようか、今考えても無駄なのに、それを考えてしまう。
でも、かえってその方が良いのかもしれない。佑唯に欲情すると、渉は止められないからだ。
自分の手で佑唯を汚してしまったらもうそこにはいられない。
既に自分は何もかも堕ちた身。責任も取れないし、償う事もできない。そのまま死んでしまうこともあり得るのだから、佑唯と一緒にいてはいけない。
渉はどちらを選ぶか、悩んでいた。
とはいえ、その決断が迫っているのかは分からないが。
「白兎夜さん、ストリートライブの場所と宿探してきますね」
「よろしくお願いします」
佑唯と一旦別れる。こんな時は、一人で落ち着く方が良い。
渉は先に進むが、その途中、電柱に張ってある一枚の張り紙に目が止まった。
「・・・指名手配では、なさそうですね・・・」
この女を探している、という内容だが、警察が作ったものではない。
しかも内容は拉致誘拐の類いとは違い、逆に女を追っている、という内容の記述だ。
顔写真も出ており、見た目は幼げのある女性。年齢は20代で、佑唯より歳上。
何をやらかしたのかは分からない。だがこちらには関係ないのだ。渉は先に進もうとしたその時、すれ違ったカップルの女性がバッグからポーチを落としたのを見た。それを拾うと、渉は声をかけた。
「すみません」
「はい?」
「今しがた、あなたのバッグからこれが落ちました」
「え、あ!すみません!ありがとうございます」
受け取ったポーチをしまうと、彼であろう男性も頭を下げて礼をした。
「わざわざありがとうございます」
「いえ、気付いて見て見ぬふりをするなんて事はしません」
華奢な女性と、ガタイの良い男性は渉に笑顔で礼を言うと、歩いていった。
(さて、宿を探しましょうかね)
「ねえ颯くん、あの人すごく大きかったね」
「俺の身長が178cmあるけど、今の人は186はあるな」
「でも颯くん、こっちの大きさなら楽勝でしょ?」
「・・・」
「痛!また頭叩いた、ひどい!」
「玲奈が街を歩いてる時に触ろうとするからだ」
「もう、そんな事言うんなら罰として、今夜は私とエッチする事」
「ああ、好きにしろ」