08
その日の夜。舞の家に招かれ、渉は舞と二人で話していた。
佑唯はストリートライブに行っており、子供を寝かしつけた舞と二人だけの時間を過ごしていた。
「私の体は男達に犯されるためにあるんじゃない・・・あの人は異常でした」
「・・・でも、竹内さん、あなた、目が変に泳いでますね」
「え?そんなこと・・・」
「・・・いえ、泳いでますね。もしかして、そういう目的で来られても許せる人がいる、とか?」
「・・・正直言えば、高校の友達の一部だけなら許せます。貴ちゃんもそうですけど、貴ちゃんは結婚してますからダメですし」
「貴博さん以外にもいらっしゃるようで」
「・・・はい、あと二人。でもその二人も結婚してますからダメです。うちのせいで関係がおかしくなったら取り返しがつきませんし」
「・・・あの写真に写ってます?」
渉が指差した写真。舞、貴博を含め8人の男女が写っている。貴博以外の“あと二人”とは、この二人のようだ。
「こちらも貴博さんに負けない顔立ちですねぇ」
「健二くんて言います。バスケ上手い、ちょいヤンキーなイケメンで、このもう一人は諒って言います」
「ふむ、こちらは何だか優しそうな雰囲気ですねぇ」
「バカ真面目で優しいやつで、そのくせにテクニシャンなんです」
「テクニシャン?」
「多重人格者なんです。人が変わって、突然ドSになってくるんです。その人格とは関係ないですけど、私は彼に処女をあげました」
「・・・」
諒という人物は、舞にとって特別な男のようだ。この強姦事件の解決で見ず知らずの渉に話してくれる内容としては妙である。
「そうだ、どうせなら聞こうかな。白兎夜さん、あの子とはどんな関係にあるんですか?」
「彼女は、自分の旅の同行者です。ストリートライブで歌を披露していましてね、そこで自分の旅の話をしましたら、シンパシーを感じたと言いまして、旅に同行したいと言ってきました」
「旅って、何をしてるんですか?」
「それは、自分も分かりませんね。何を探して旅をしているのやら」
「ふーん・・・で、あの子とは、どうなんですか?」
「特に何も」
「あれ、何も?」
「ええ、何も」
「えー、勿体ない」
期待された答えではなかったため、舞はがっかりした。渉と佑唯がもしかしたら、と思ったが、あっさりと否定されてしまっては面白くない。
そこで舞は、質問を変えた。
「渉さん、もしかして童貞とか」
「・・・いえ」
「お、経験あり。その相手は、あの子・・・?」
「いえ、佑唯さんとはそんなことはありませんね」
「うーん、じゃ、初めての相手はどんな人?」
「初めての。初めての相手は誰だったでしょうかね、経験人数が多すぎて覚えてません」
「え!?」
「初めての相手は・・・本当に誰だったでしょうか」
経験人数が多すぎて覚えていない。渉は一体どんな人生を送って、今の旅人になったのだろうか。
謎が謎を呼ぶ旅。時刻は夜の11時。渉は佑唯の元へと向かうため、舞の家を出た。
「いつか、話してくださいね」
「思い出しましたら、お話ししましょう。それではいつかまた」