05
「んん、あれ・・・ここは」
「あっ!起きたぁ、ママ、パパ!」
あれからどれだけの時間が経ったか分からない。渉が目覚めると、そこは民宿ではない、別の部屋。
隣にいたのは知らない子供の声で、渉が目覚めたのを確認すると両親を呼んだ。
「こら、もう寝なさい」
「はーい」
「よっ、あんた、気分はどうだ?」
深夜に渉を運び込んだ為に、子供が起きてしまったのだろう。子供を寝かしつけた母親が後から来ると、父親の隣に座った。
それに加え、更に二人の女性が反対側に座った。
「あれ、あなたは・・・」
「須藤貴博だよ、覚えてないのか」
「・・・ああ、お昼にお会いした、あの方・・・」
「心の声が聴こえたんだよ。だからもう急いで駆けつけたんだ。残念ながら遅かったけど、あんたのお陰でまいまいが助かった」
「本当にありがとうございました」
「・・・申し訳なかったです、自分に、力が無いばかりに手間をかけさせてしまいました」
「まーいんじゃねーの、舞が助かったんだし、無鉄砲だし怪しいし」
「あいりん、後の二つ理由になってないけど」
古川愛李と竹内舞は部屋を出ていった。
「で、改めて聞きたいんだけども、あんた何者?もうすぐ秋になる季節時期だからって、あの厚着は妙だよな」
「・・・自分、白兎夜渉という者です。白ウサギとも言います。旅をしてましてね、あの時一緒にいた女性は、つい最近、旅についてきてくれた同志です」
「旅?旅って、何をしてるんだ?」
「さあ、その目的はわかりません。何を探してるんでしょうかねぇ」
「・・・嘘は、ついてねぇんだな。本当に分からないって言ってる」
「あ、そういえば、今泉さん・・・連絡もしてない」
「ん?もしかしてあの女の子か」
「宿に戻らないと。あ、痛!」
「あ、起きたらダメですよ、まだ治ってないですから!」
本当に体が動かないため、やむ無く貴博の家に世話になるしかない。
改めて状況を整理してみた。竹内舞が助かったのは事実。犯人はあの二人の大きな男なのだが、それ以外に共犯者がいるのだろうか。あの出会い系サイトにあった、強姦を映した動画は1ヶ月以上前のアップだ。
あの二人の男がもし、動画に映っていた男と同一人物だとしたら、竹内舞と非常に近い人物でなければならない。あの出会い系サイトの動画をアップした説明もつかないからだ。
明日、怪我が治ったら知るべきは、竹内舞の通うスポーツジムの会員。そして、そのジムのトレーナー。
秘密を握っているのは間違いない。
「ジムのトレーナー、まいまいの彼氏だぜ」
「えっ」
「心の声が聴こえたよ。ジムのトレーナーと、あの出会い系の謎を解きたいって」
「・・・ふぅ、お見通しですか」
「悪いけどな。で、トレーナーはまいまいの彼氏なんだが、怪しいのも大正解だよ。あの男、何か隠してやがる」
「じゃ、心の声を聴いてみては?」
「いちいち聴けないんだ、長時間のインターバルがないと、俺の目と耳がイカれちまう」
「なるほど、では、自分が探すしかありませんねぇ」
「ま、とにかく休め」
渉は明日に備えて休む事にした。