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「・・・」
「あの、白兎夜さん?」
「・・・」
「白兎夜さん!」
「はっ!これは失礼」
「もう、ずっと新聞読んでるじゃないですか」
「いやいや失礼、これは2日前の新聞なんです。あ、ちなみにこちらが今日の新聞です」
「2日前の新聞なんか捨てちゃってくださいよ」
「ところがそうはいかないんです、この記事が気になってですねぇ」
カフェで一服していた渉と佑唯。
渉がじっくりと見ていたのは、ある性犯罪の記事だ。
「2日前の方にはこう書いてます。
昨夜、竹内舞さん(28)が、○町○丁目の路上で後ろから来た男に襲われ、路地裏に連れられて強姦された」
「強姦・・・ひどいですね」
「ですが、今日の新聞にはこう書いてます。
2日前、○町○丁目の路上で後ろから来た男に襲われ、路地裏に連れられて強姦された竹内舞さん(28)が、昨夜同じ場所で後ろから襲われ、路地裏に連れられて強姦された、と。男は2日前の犯人とは違う男だそうで」
「同じ場所で、同じ人がですか?」
「自分の推測では、自宅への帰り道、被害者がここを通ると知っている真犯人の仕業だと思いますねぇ」
「許せませんね、その人!」
「この事件気になります。滞在する間に時間があれば調べてみたいですねぇ」
「・・・そうですけど・・・」
「さ、一服したところで、行きましょうか」
「あ、はい!」
渉と佑唯は今夜泊まる最安値の民宿を押さえ、ストリートライブの出来そうな場所を探した。
しばらく歩いた先、二人は繁華街にたどり着いた。夜になると賑わいそうな場所である。店が閉まった後ならばスペースは空きそうだ。
「あ、ちょっと買いたいものあるんでコンビニ行ってきますね」
佑唯がコンビニへ行っている間、渉は人の流れを見ていた。したい事もない渉にはこれしかする事がなく、たまにニヤリと微笑んでは驚かれていた。そんな中で、渉はコンビニの向かいにある雑居ビルの一階テナントに貼られたポスターを見つけた。するとその中の一枚に気になるもよがある。
「・・・この方、もしかして?」
それはスポーツジムの宣伝ポスターであった。女性の会員のメッセージが下に載っているが、その会員の名前がなんと“竹内舞”だった。
(このジム、行ってみますかね)
「お待たせしました、白兎夜さん、どうしたんですか?」
「これを見てください」
「スポーツジム?・・・竹内、舞。あれ?竹内舞って・・・」
「・・・この強姦事件の被害者と、年齢も名前も一致します」
「気になりますね、これ」
竹内舞強姦事件。気になってしょうがない渉はニヤリと笑い、足早に歩いていった。