うさぎ男 - case.2 今泉佑唯
03
そして次の日。夜の10時になって、もう一度あの場所へ向かった渉だが、今泉佑唯はいなかった。
まだやってきていないのか、用事で今日はダメなのか、忘れられてしまったのか。
渉はその近くで立って待つことを決めた。諦めきれないのだ。あの歌を聴くまで、退けないのだ。
根気強く待ち続ける事20分。周りの店舗等は閉店し始め、夜の店やキャッチの人間が増えてきた。

それでも根気強く待つ事40分。早くにやってきたストリートパフォーマーがギターを弾き始めた。
渉はハットを深く被ると、その場から離れた。彼女の歌じゃないなら、耳障りなだけだからだ。


そして時刻は11時30分。パフォーマーが3人ほどになったのだが、今泉佑唯はいない。せめて、日を跨ぐまでは待とう。そう決めたその時である。


「ねぇ、そこのお兄さん」

「・・・?」


「お一人ですか?」

「・・・一人ですが、何か?」

「パフォーマーでも待ってるんですか?」

「・・・ええ、今泉佑唯さんという方がいましてね」

「・・・ああ、あの子ですか!可愛い子ですよね、歌ってる子」



突然、話しかけてきた女性も今泉佑唯に興味があるようだ。話によると彼女がやってくるのは12時過ぎだけだそうで、渉は女性と喫茶店に入って待つことにした。2階の窓際の席に座り、パフォーマーの見える位置を見定めた。




「そうだ、自己紹介。私、衛藤美彩って言うの。あなたは?」

「白ウサギこと、白兎夜渉です」

壮流 ( 2017/01/08(日) 22:17 )