case.2 今泉佑唯
01
夜の1時を回る頃。まだまだネオンの煌めく大通り。深夜の仕事帰りの会社員や、これからが仕事という会社員もいる。
そんな人通りの多い通りには、時折ストリートパフォーマーがいる。
夢の為に真剣に、そして見てもらう為に。そんなストリートパフォーマーの中に、秀でて目立つ者がいた。


彼女は歌を歌っていた。しかも若い。歌声は響くが、その声を聴いてくれる者はほんのわずかな数だけ。一生懸命歌おうとも、拍手はぱちぱちと一人で鳴らせる数だけ。
また今日もダメか。荷物を片付け、帰り支度を整えたその時。


「失礼、お嬢さん」

「は、はい」

黒コート、黒ハット、黒サングラスの男に呼び止められた。



「とても素敵な歌でしたよ」

「え、あっ、あ、ありがとう、ございます!でも、まだまだです、自分なんか・・・」

「ご謙遜なさらずとも良いのです。自分もお世辞は言いませんので」

「いえ、ほんと、まだまだですから・・・」

「そうですか、では、またその歌声をご披露して頂けませんか?また、明日の夜にでも」

「明日ですか!?・・・・・・わ、わかりました。明日もここで歌ってます!」

「ありがとう、それでは楽しみにしていますよ、今泉佑唯さん」

■筆者メッセージ
欅坂から登場です。黒に包まれた白ウサギは何をする気でしょうか。
壮流 ( 2017/01/01(日) 21:49 )