case.2 今泉佑唯
04
「ねぇ、あなた顔見せてよ、ハットは外してくれてるのに、サングラス外さないなんて」


「・・・見知らぬ他人に見せる顔はありやせん」

「せっかく同じ目的で出会ったのに冷たい人」

「今、自分が会いたいのは今泉佑唯さんだけです」

「もう、冷たいに加えてドライね」

「ええ、自分は何も無いモンでありやす」


時刻はもうすぐ12時を過ぎる所。
渉はコーヒーを飲むと、窓からパフォーマーを確認した。今泉佑唯はまだ来ていない。



「ねぇ、お仕事は何をしてるの?」

「・・・さぁ」

「え、もしかしてフリーター?あ、まさか無職!?」

「・・・自分は旅をしてるんでね、探してるもんがあるんで」

「・・・やっぱ、無職?」

「ええ、無職です。あなたは?」

「私はただのOLよ。ねぇ、探してるものって何?」

「そいつぁ、教えられませんねぇ。なぜなら、自分もそれが何か分からないもんで」


「えぇ、何それ・・・」



話をしているうちに時刻は12時を過ぎており、渉は窓から外を覗く。すると昨日とは別の場所だが、見覚えのある顔がある。
間違いなく、あれは今泉佑唯だ。
渉はハットとコートを身に付けて、席を立った。


「やっと来てくれました・・・」

「え?来たんですか、って、ちょっと!待ってよ!」


結局、衛藤美彩に奢らせ、渉は今泉佑唯の元へ向かった。





「・・・よし。あ、そうだ、あの人・・・」

彼女の方も渉を気にしていた。自分の歌に拍手をしてくれて、おまけにアンコールも希望してくれた唯一のお客である。
だが人の記憶は曖昧である。覚えてくれているか、そこに期待は出来ないもの。あまり渉に期待をせずに、いつも通りの歌を歌おう。そう決めて、マイクのスイッチを入れた。



「今泉さん!」

「え・・・あっ!」

走ってやってきた黒い男。間違いなく彼だ。

「会えましたね、よかった・・・」

「本当に、来てくれたんですね」

「ええ、あなたの歌が聴きたいからいつだって行きますよ」

「そんなに・・・そうですか・・・ありがとうございます」



顔は見えない。だが彼はとても良い人。そんなお客のためを思うと気合が入る。するとそこに、もう一人のお客がやってきた。


「はぁ、はっ、もう、早いってぇ」

「タイミングがいいですね、今から始まるんですから」

「ちょ、待って、深呼吸させて」


今夜は最初からお客がいる。いつもと違うパフォーマンスに、今泉佑唯は笑顔で決めた。

■筆者メッセージ
キャスト集合です。この後はどうなるのでしょうか。


ちょいとストックが無くなってきました。更新がまた遅くなりますのでご了承の方をお願いします。
壮流 ( 2017/01/11(水) 11:54 )