case.1 上西恵
04
「・・・できてたの」

「本当に?えー恵ちゃんにもついに子供かぁ」


検査薬の反応は間違いない。恵の中には新たな命が宿っていた。
心当たりのある男は、今どこで何をしているのだろうか。

「てことは、恵ちゃん結婚?」

「ううん、一夜だけ出会った男の人との子供」

「えぇ!?なにそれ、何があったらそうなるの?」

「超イケメンだったよ。でもあれから音信不通なの」

「えー、いいんだか悪いんだか分かんないね」





一夜だけの関係。セックスで恵を失神させ、果ては孕ませてその場から姿を消した。
白兎夜渉。ウサギの名で世を渡る、孤独の旅人。仕事は何をしている、どこの出身、家族、友人、趣味等、詳しく知りたい事が沢山あったのに何も聞けなかったのが心残り。だが不思議なのは、彼の言葉の中で何度も繰り返す言葉。

「白ウサギ?」

「自分はウサギです、って、何回も言うの」

「何を意味してるんだろうね?」

「もしかして、逆に誘ってるとか?ほら、ウサギって、一匹じゃ寂しくなって死んじゃうって言うし」

「確かに。もしかしたら、しばらく経って連絡したら会えるかもよ!」

「ちょっと期待してみようかなぁ」


「妊娠させて消えちゃう男ってさ、何か最近ネットで噂になってる人、ほら・・・・・・あっ、颯って人!あの人っぽいよね」

「それ見た、ネットでやたら騒がれてるよね」




彼はどこへ向かおうとしているのか知る者はいない。彼の素性は何なのか。白ウサギの行く末に待つ未来は何なのか。

■筆者メッセージ
恵っち編終了です。
結局いつもの作風になりますが、これが一番好かれてるようなので。

颯くんの名前だけしれっと出てきました。僕の官能作品のきっかけは、颯くんですからね。
敬意を持って書かなければ(笑)
壮流 ( 2016/12/29(木) 22:59 )