02
教室にシブヤが訪れた数日後。
啖呵を切ったこともあり登下校中は常に警戒をしていたが、その日の下校時すぐに違和感に気付く。
後方の足音から何者かにつけられていることを確信した隆治は、視線の曲がり角の先に高架下があったことを思い出す。
「そこでとりあえずお話してみますか」
曲がり角を曲がり、後方の相手から距離を取るべく駆け出そうとした瞬間であった。
高架下でヘッドホンをしながらパラパラを踊る同校の生徒がいることに気付く。
あからさまに異質なその光景に、隆治は後方のことも忘れてゆっくりとその相手へと歩み寄った。
「えっと、何してるの?こんなとこで」
距離が近づき声をかけるも、ヘッドホンから音漏れしていることもあり余程の大音量で音楽を聴いているためか、その人物が隆治に気付く様子は無かった。
「もしもーし!」
「うわっ!何っすか!」
先程よりも大声で声をかけるとさすがに違和感を感じたのか、踊っていた人物は横に目を向ける。
無意識のうちに自らの隣に誰かがいた事による驚きを口にした彼女は先程まで耳に当てていたヘッドホンを首へと下げた。
「何って。君も、多分後ろの連中もだろうけどさ。シブヤさんの舎弟ってことで合ってる?」
隆治が問いかけついでに背後からついてきていることに気づいている旨について口にすると、曲がり角で姿を隠し様子を伺っていた数名も姿を見せて彼へと歩み寄る。
「よくぞ聞いてくれました!私こそがシブヤさんの1番の舎弟、ダンスだ」
想定通り彼を取り囲むことに成功したこともあってか、ダンスは得意げな表情を見せながら改めて相手へと名乗る。
「で、ご想像通り後ろも舎弟だ」
「おい、なんでオレらをその他みたいに言ってんだよ」
その後隆治の背後に居る人物を指差して紹介をすると、その対応があまりにも雑であったためか不満の声があがる。
以前同様揉めそうになっていることに彼が笑うと、数名から睨みつけるような視線を受けた。
「山椒姉妹の時もそうだったけど、横の繋がりって脆いんだなぁって」
空気がピリついているにも関わらず隆治が更に煽るように告げると、後ろに立っていた生徒らは今にも飛びかかりそうな勢いで隆治へと詰め寄る。
「橘隆治!お前には私たちとついてきてもらう!断ったら、力尽くってことで」
説得するようには告げるものの、圧倒的な優位に立っていることを確信しているダンスはにやりと笑みを浮かべた。
「ってことは前田さんの方にも行ってるわけか」
「お、おい!誰だよ話したやつ!なんで知ってるんだよ!」
しかしながら全く取り乱していない隆治は腕組みをしながらふと頭に浮かんだ推測を口にする。
それが図星であったためか慌てふためいたダンスは他の仲間へと目配せしながら問いかけると、それに釣られてか周りを囲む彼女らにも動揺が見られた。
「前田さん、俺より強いからそっち全員であたってからの方が正解だと思うけどなぁ。またシブヤさんに怒られちゃうんじゃない?」
「それは……えっと」
今度は隆治の方から説得するように告げると、言い返すことが出来ず納得してしまったためか迷うように視線を泳がせる。
その様子を見ていた取り巻きらも、間が空いたことにより先程まで上がっていた温度感はいつの間にか落ち着いていた。
「今ならまだ間に合うんじゃないかな」
「べ、別にお前にのせられた訳じゃないからな!みんな、一旦あっちだあっち」
更に意見を押されたことで折れたダンスは、周囲の仲間に呼びかけてからその場を走り去っていく。
戸惑いながらも全員がその場から離れていくのを見送ってから、隆治はすっきりとした様子で伸びを1つして改めて帰路についた。