「他の学校のヤンキーにも絡まれちゃうなんて、今日は厄日だよ。勢いでやっちゃったけどさ」
チームホルモンから得た情報を整理しながら、隆治は帰路についていた。
ふと数分前に巻き込まれたトラブルを思い返した腕時計の画面を見る。
“ホンジツ アト 0 カイ”
応戦しまったことには若干の後悔の念を口にしながら、時計の側面を操作する。
「アンプルももう無いから補充を……あれ?」
スライドするように出てきた時計の内部の何かをはめ込むようなくぼみを見ながらつぶやいていたが、視線を上げた際に疑問符が浮かぶ。
今しがた視界に入った人物は間違いなくスカジャンを着用していた少女であった。
「居ない、路地裏の方に行ったかな」
隆治は足早にその後を追うが、その姿を見失う。
行き先として可能性のある裏路地を見つけると、左右を再度確認してからその道を進んでいった。
「見失った、確かにこっちに……」
「ねぇ、どうしてついてきたの?ふふ」
しばらく裏路地を進むと、薄暗いながらも開けた場所へとたどり着く。
やはり探していた人物が居なかったために引き返そうとしたその瞬間、振り返ると先程目にしたスカジャンを着用した少女がそこには居た。
彼女は危険だ。
危険信号を感じた隆治は携帯を咄嗟に取り出すが、即座にそれは手から離れた。
「携帯はだめ。ふふふっ」
雨も降っていないのに彼女が手にしていた傘。
骨がひしゃげ、雨を防ぐビニールが剥がれかけており、もはや傘とは呼べなくなっている代物により叩き落された携帯には損傷が見られた。
「あれ?怒ってる?携帯壊されて……怒ってる?ふふっ、あはははははははっ!」
事実を告げて顔色をうかがいながら少女は隆治へと尋ねる。
竜と富士山を模った装飾にダークグリーンのスカジャン。
チームホルモンから聞き出した情報の中であった、ラッパッパの中で最も近づいてはいけないとされる人物。
隆治の中でどんな危険な相手が出てくるのかと警戒をしていた相手、“ゲキカラ”であった。
「可愛い」
「えっ?」
狂気じみた笑みを浮かべてはいるものの、すらりとした体型に艶のある長い黒髪、白い肌を持つ彼女。
想像とかけ離れた相手の容姿に、隆治は思わず言葉をこぼす。
不意を突かれた一言に、ゲキカラは思わず毒気を抜かれたように聞き返す。
一瞬間が空くものの我に返った隆治が慌てて彼女から距離を取ると、ゲキカラはにんまりと笑みを浮かべた。
「キミ、面白いね。ふふふっ、あははははっ!」
途切れていた殺気であったが、彼女がスイッチが入ったように声を出して笑い始めることにより再び危険な雰囲気を放つ。
その直後ゲキカラは問答無用で距離を詰め拳を繰り出すが、隆治が咄嗟に身体を反らしたことにより空を突いた。
「間違いない。彼女、所持者だ」
本来ならば隆治の“探し物”を所持しているであろう候補者ならば腕の端末を操作し確認するものの、対峙した感覚により確信を持つ。
改めて端末を確認をしても残り回数が無いことを知らせる表示にばつの悪そうな表情を見せるが、ゲキカラの方はこれ以上無いほどの上機嫌な表情を浮かべていた。









