5. 近づく
危険な嘘
警視庁捜査一課室

「いよいよ作戦決行ですね」

美月と飛鳥は今まで以上に真剣な面持ちで対面している。

「坂之上46運営との交渉本当にご苦労さま」

「いえいえ」

「作戦立てといてここまで全部山に任せきりだったし、あとは私に任せて」

ここまで全て美月に託していたのはこれを告げるための布石。確実に一番危険な役割は自分が請け負う覚悟が飛鳥には出来ていた。

「そんなっ…ここまで来たんです!和ちゃんを指定場所まで連れていくのは私にやらせてください」

この事件への思い入れの強さが一番強いのは自分という自負が美月にはある。飛鳥は自分が巻き込んだのに、ここを押し付ける訳にはいかない。それに、和のことを死んでも守るとまで約束している。最後まで責任を持ちたいと思うのは当然だろう。

「気持ちは分かるけど、ダメよ危険すぎる」

「危険なのはどっちが行っても同じです!」

両者ともに1歩も引かない。

「どうしてそう頑固かなぁ…山は」

一度これと決めたら最後まで全力で突っ走る。そういう性格であることは飛鳥も重々承知していた。
そんな美月だからこそ常に心配はしていたものの、今までは壊れそうになった時だけそっと手を差し伸べるだけだった。それくらい強い子だと先輩から見ても思うが、今回ばかりは勝手が違いすぎる。

「わかった、じゃあ山に任せるよ決行は明後日、朝10時に井上さんの家に迎えに行って、向こうが用意した手筈のメールは送っておくから、怪しまれないようにあくまで誘拐に見せかけるようにね」

「わかりました、ありがとうございます」

頭を下げて去っていく美月。

「ふぅ…さてと…」

スマホを手に取り、おもむろにどこかへと電話をかける飛鳥。

「お世話になっております、私警視庁捜査一課の齋藤飛鳥という者ですが、井上和さんのお電話でお間違いないですか?」

「はい…」

「先日はうちの山下の提案を受け入れてくださってありがとうございました」

「あ、山下さんのことご存知なんですね」

「はい、勿論です」

「良かったです、ほら、警察ですとかそうやって騙されるかもしれないなって思って…」

「それくらい用心してらっしゃるんですね、いいことです…それで井上さんには明日山下が話した通りにご協力頂きたいんですけど…」

「わかりました」

「明日10時にお迎えに上がります、インターホンでいちごパフェって言うんで同じ時間帯にインターホンが鳴っても、そうい言わなかった人は絶対に家にあげないように、もしもがあってはいけないので」

「はい、わかりました…山下さんは来ないんですか?」

当然の質問だろう、和は山下の熱意と姿勢を信じてこの作戦を受け入れたのだから。

「山下は私達のあとを追う形で来てもらうことになってます、そばにいるよりもいざという時にはその方が警護がしやすいので」

「なるほど…わかりましたそれなら大丈夫です」

「ではまた明日、くれぐれもお気をつけて」

「ご心配ありがとうございます、失礼します」

通話を終え、電話を置く。

「ふぅ…あとは…」

スタスタと飛鳥が歩いていった先は勿論。

「豊〜!」

「どうした、そんな大きな声出して珍しい」

これからつく嘘のため、明るいトーンで誤魔化そうと思ったが思いっきり怪しまれた。

「あ、いや、ごめん笑 作戦の結構が決まったから」

「そうか、いつだ」

「明後日、10時に井上さんの家に山が行く」

「ダメだ、俺が行く」

「バカ、向こうは女が誘拐してくるって聞いてるのにあんたが行ったらすぐバレるでしょ」

豊にしては珍しいほどのポンコツ提案だったが、それくらい心配しているということ。

「それは…そうだな…山下さんのスマホに位置情報アプリ入れとけ、いつでも場所わかるようにしとくぞ」

「変態、スケベ」

イタズラに笑う飛鳥。

「バカ、事件終わったら消すし入れて貰う前にちゃんと説明するよ」

「終わっても入れたままにしておくように言おうか」

「結構だ、ストーカーになる気は無い」

「じゃあ山の何になる気なのかなぁ〜」

「戯言が多いぞ、なんか隠してるのか?」

(流石に鋭い…)
「いや、ほら、私達明日以降どうなるか分からないし…今日3人でご飯でも行きたいな〜って思って…焼肉、個室で石橋で予約しちゃったから笑いいよね?」

「勝手に人の名前使ったのか…わかったよ壮行会だな」

「山にも言っとくから!それじゃ」
(あいついちいち鋭いから誤魔化すの大変だわほんと…でも流石に行く前に2人にわかるようにしておかないとまずいよね…私だって絶対大丈夫なわけじゃないし…)

美月に危険な仕事をさせないため、決行直前まで仲間の2人に嘘をつくという危険な選択をとった。明日の飛鳥の運命は…。

■筆者メッセージ
昨日投稿し忘れてたやつです〜。
ブラッキー ( 2023/01/31(火) 19:36 )