組織犯罪対策課、団結
警視庁組織犯罪対策課
絵梨花は頭を抱えていた。手がかりを掴んでからもう何日も進展がない。リバティスターが怪しいのは確かだし、間違っているとも思わない。ただ、いくら調べても現地に足を運んでも、社員やアルバイトに聞き込みをしても何も手がかりが出てこないのだ。
「生田さんたまには休んでください、今倒れたらそれこそ…」
買ってきた缶コーヒーをそっとデスクに置く後輩の遥香。
「そうだよね…わかってるんだけどさぁ…」
明らかに疲れきった様子で机に突っ伏し始める絵梨花。
「戻りやした〜」
相変わらず軽いテンションで帰ってくるのはつい最近警視庁に復帰した健二。
「こんな時にどこほっつき歩いてたのよ!」
捜査一課の2人と仲がいいことを知ってから当たりが強くなっているが、本人はあまり気にしていない。
「ちょっと大和組の元構成員の子に会ってきたんだよ」
「大和組?なんでそんなところに行ってたんですか?」
特にわだかまりのない遥香は純粋に疑問を尋ねる。
「いや、確かあそこの組な暴対法が強化されてからシノギが上がんなくなって勢力が弱まってたはずなんだよ、なのに最近やたらと力をつけてるみたいでさ、なんかあんのかなって思って」
「なるほど…何か収穫は?」
「ない、シノギの話なんて話すことはねえの一点張りで」
「またクスリに手出して儲けてんでしょ、あの組結構現代ヤクザというか半グレに近いとこあるし」
なんだかんだ絵梨花も会話には混ざってくる。
「いいや、ヤクだけであんなに潤うってことはまず無いね、だとしたら大和組だけが急に勢力拡大するってのは理にかなってない。他の組でも同じことが起こってないとおかしいからね」
「確かに…」
「そんで、まぁ話を聞いてきたわけ。収穫はなかったけど黒だな」
「なんでそんなことが言えるんですか?」
「2回同じことを聞いて怒る、やたらと他の余計なことはよく喋る。こういう行動はなにか隠したいことがある奴がとる行動なんだけど、そのまんまのことをしてきたよ」
「へぇ…」
思わず感心する2人。
「で、絵梨花ちゃん、気持ちは分かるけど行き詰まった時こそ一旦引かないとダメだってことを言いたかったんだよ」
「どういうこと?」
「確かにリバティスターは怪しい、どう考えても関わってると踏んでいいと思う。でも、そこから証拠が出ないなら執着してても何も進まないよ」
「…………………」
俯いて何も言えなくなってしまう絵梨花。
「そんなに落ち込むなって、絵梨花ちゃんも遥香ちゃんもさ、リバティスターに辿り着くまでめちゃくちゃ早かったと思うし、力あんだからもうひと踏ん張り頑張ろうぜ」
優しく言葉をかける健二。
「ありがとう…萩原くん…」
さっきまできつく当たっていたので、それを覆す恥ずかしさで照れながら感謝を述べる。
「気にすんなよ、それで早速だけど2人に大和組について調べて欲しい、俺はここがこの事件に関わってるって踏んでる、こっち側をあたるのは組対課の十八番だろ?」
「OK!!」
組織犯罪対策課にも頼もしい男が加わり、この事件の捜査も更なる進展を見せ始めるのだった。