各々のアプローチ
2週間後、組織犯罪対策課捜査本部
「かっきー!わかったよ〜!…うん、まぁわかったって言っても憶測なんだけどぉ…」
苦戦したが、やっとの思いで可能性のある輸入ルートを見出した絵梨花。
「ホントですか!?」
「うん!半年前に異常な数のモデルガンを輸入した業者があったのよん!」
クリックしパソコンの画面を開く絵梨花。そこには株式会社リバティスターのトップページが映っている。
「確かにここは大倉庫を抱えていて、大量輸入自体に不思議は無いけど…どう考えてもモデルガンをそんなに一気に、ましてや海外製のものなんておかしいわ、この中に本物をいくつか忍ばせたと考えるのが妥当だと思うの」
「それはわかりますけど…そう思ったところで証拠がなくないですか?」
冷静な受け答えをする賀喜。
「そうなんだよね、当たり前だけどこれじゃ令状は取れない」
「とりあえず、リバティスターについてもう少し調べる必要がありそうですね…私もここに的を絞って捜査してみます!」
「お願い、頑張っていこうね!」
「はい!」
見えてきた黒幕の尻尾。だが、本当に大変なのはここから、2人は犯罪ソムリエMr.ゼロのした犯罪計画から証拠を掴み取り、逮捕に至ることが出来るのだろうか。
警視庁捜査一課室
美月の席に行き、肩をちょんちょんと叩く飛鳥。
「山、ちょっとトイレ行かない?」
「え?飛鳥さん寂しいんですか〜?もう〜しょうがないな〜」
「う…う、うん(ㅎ.ㅎ )」
女子トイレ
「寂しいわけないだろバカ」
「わ〜かってますよぉ、カモフラージュじゃないですかぁ」
「必要あった?それ…まぁいいわ、それで?どうなってる?」
「さっき一人任意同行で引っ張ってきましたよ〜、掲示板サイトで坂之上46の新人さん、井上和の悪口書いてた女にバッチリ同じようなメールが来てました!結構予定が半月ズレてたのと、こっちの報酬は100万のようですけど」
「言った通りにした?」
「はい、ちゃんとお断りのメールを入れて"警察に連絡する"と今さっき」
(〜🎶)
美月の持っていたその女のスマートフォンが鳴る。
「もしもし?」
「もう警察には言ったのか?」
「まだですけど」
「そうか、お前坂之上46の井上和が嫌いなんだろ?」
「大嫌いですけど?」
「なら、ヤツの人生を終わらせて100万貰えるなんていい機会だと思わないか?」
「思いません」
「なぜだ?」
「だって…依頼内容見たら誘拐して終わりじゃない? 井上和の末路が見れるなら考えるけど?」
「なるほど…よし、いいだろう末路を見せてやろう」
「末路って?どうするの?殺すの?」
「殺しはしない、だがそれ以上に残酷だ」
「殺しもしないのにそれ以上なんて…口で言われても分からないわ、こっちだってリスクを負うのよ?証拠はあるの?」
「あるがそう簡単には見せられないな」
「それじゃあ信用出来ないわ」
「…」
しばらく間が空いたが、相手の男は決心したように続ける。
「わかった…今送ったやつを見ろ」
美月が耳から話して画面を見ると、そこにはガラスケースに入れられた女達の画像が送られてきていた。
「これは…?」
「これを売り飛ばすのさ、さぁ、これでやってくれるな?言っとくがここまで話して拒否するようなら貴様自身も覚悟することだな」
「ふふ…こんな姿になって売り飛ばされる井上和を見れるのね?やるわよ!100万なんて貰わなくてもやるわ!」
「契約成立だな…くれぐれも馬鹿なことは考えるなよ?」
ブチッ
「よしっ!作戦通り!」
「完璧…だけど…え、山ホントに嫌いなの?」
「いや全然、演技ですけど」
「ホントに〜?ちょっと怖いくらいだったんですけど笑」
「ホントですって〜私可愛い女の子だいっすきなんで」
「わかったわかった…さて、ここからが勝負だよ!」
「はい!頑張りましょう!」
光が見えて喜び張り切る2人をよそに頭を抱える男が1人。女子トイレの前で盗み聞きしている豊である。
「あんなのしょっぴいてきたもんだから大体こんなことだろうとは思ったが…手間のかかる2人だな…」
バレないように進めていた計画を呆気なく見抜き、危険すぎると止めようとしていたが、2人の嬉しそうな会話を聞いてしまっては止めるに止められず、サポートすることを強く決意した豊だった。
真っ向勝負で捜査に挑む組織犯罪対策課に対し、捜査権のない捜査一課組は囮作戦で相手の陣に飛び込む作戦に出る。かなり危険な作戦であることは3人共に理解しているが、それ以上に大きなチャンスをみすみす手放すわけにはいかない。ボヤっと敵の形を捉え始めた刑事達。しかし、犯罪の影を見せても実体を捉えさせないのが犯罪ソムリエMr.ゼロ。こんなにも近いようで遠い敵との対峙はまだ誰も経験したことがない。刑事達の戦いはまだ始まったばかりである。
翌日 美月の家
(続いてのニュースです、行方不明になっていた坂之上46の堀未央奈さん、これまでは失踪と報道されてきましたが、今朝、警察は誘拐事件として捜査を進めると発表しました。また、これを受けて坂之上46合同会社は所属アイドルの警備を強化する方針を発表。有名アイドルの誘拐事件ということでファンからは様々な声が上がっています)
「え…そっかあ…流石にこれだけ見つからなくて失踪ですとは言い張れないよねえ……!?」
何かに気づいた美月は急いでパソコンを開き、掲示板サイトを開くと嫌な予感が的中した。
(誘拐かよw出来たら最高だよなw)
(監禁してやり放題w)
(出来たら天国だよなw)
(1回はそんなことしてみたいわwしかも全然捕まらないしw)
一見、インターネットにはよくあるような馬鹿な書き込みだが、今回の事件に限っては大問題であることを囮作戦をしようとしている美月はすぐに理解した。
「一気に…被害が拡大する…!」
絶対に被害の拡大は食い止めなければならない。美月は血相を変えて家を飛び出した。