3.正義とルールの狭間で
組織犯罪対策課 生田絵梨花
警視庁組織犯罪対策課の生田絵梨花は美月や飛鳥とは違いエリートのキャリア組である。中高の頃は周りがどんなに楽しそうに遊んでいようと我慢を重ねて必死に勉強し、大学に入ってもまた勉強。そんな日々を重ねて国家試験を首席で通過し、キャリア組のエリート刑事となった。刑事となって間もない頃はほぼデスクワーク。絵梨花が想像していた刑事像とは全く異なるものだった。キャリア組は基本的に警察官僚の道へと進んでいくので現場に出て捜査ということはあまりないということを、勉強に明け暮れていたせいか絵梨花は知らなかったのだ。階級こそいきなり警部補から始まり、多少の優越感はあったのだが、それも次第になくなりただ、自分はなぜ刑事になったのかと自問自答する日々が続いていた。
そこで、絵梨花は出世コースを自ら捨てて現場に出ることを志願した。組織犯罪対策課に配属され、現場に出ることに喜びを感じていたが、そこでも苦難に直面する。
「うげぇっ…!」
半グレ組織の麻薬売買の現場を抑えにいった時には一番最初に狙われてしまった。ゴリゴリの刑事達の中に混ざった華奢で可愛らしい女刑事。血の気の多い半グレが逃げようと考えるなら絵梨花を倒そうとするのも無理はない。
その犯人は無事に確保されたが
「キャリア組は大人しく机に座ってりゃいいのによ、勘違いしやがって」
こんな捨て台詞を階級が下である巡査部長の刑事に吐かれた時は殴られた痛さよりも悔しさが勝ったものだ。
それから道場に通うようになり自らを鍛え直した。どんなに疲れた後でも、難しい事件の後でも努力家の絵梨花がサボることは無かった。そうして1年が経つ頃には周りの刑事達にも認められるようになるどころか、自分を高めるその姿勢に尊敬されるようになっていたのである。しかし、人生というのは上手くいかないもので絵梨花がようやく成果を上げられるようになった頃、警視庁内でチヤホヤされていたのは警視庁捜査一課の若い3人の刑事達であった。
「豊さんまた事件解決したんだってよ、すげぇなあ」
「飛鳥ちゃん、あんなに可愛らしいのに刃物持った犯人投げ飛ばしたってね〜」
「山下さん、糸口も掴めなかった殺人事件投げられたのに1ヶ月で犯人引っ張ってきたって〜あんな可愛くて仕事も出来るなんてな〜」
これまで血の滲むような努力でのし上がってきた絵梨花にとってはこれが面白くなかった。3人が優秀だったこともあるが、考えてみれば捜査一課が扱う事件がよくドラマにもなるように話のタネにしやすいという面があるので単純比較は出来ないのだが、絵梨花には
(なんなの!あんな3人よりも絶対私の方が…!)
という気持ちがあったのは事実である。
こういった経緯があり、捜査一課の3人に対抗心を燃やし冷たく当たっているのだが、本来の絵梨花はそういう人間というわけではない。今回の事件で絵梨花が多少暴走気味でもサポートしながらずっとタッグを組んでいる賀喜遥香は絵梨花に助けられた1人。同じようにキャリア組から現場に来た賀喜に、ここでやっていくには何が必要でどう頑張らなければならないのか、そのいろはを寄り添って優しく教え込んだ。そんな先輩の苦労を誰よりもわかっているからこそ、多少暴走気味でもサポートして支えようとしているのだろう。
組織犯罪対策課と捜査一課、部署は違えど人は違えど目的は同じ。決してどちらが悪ということは無い。この2つの正義はこの後どのような結末を迎えるのだろうか。


ブラッキー ( 2022/11/13(日) 22:10 )