3.正義とルールの狭間で
大きい闇
都内某廃工場

「お楽しみは済んだかな?」
明らかに高級であることが分かるスーツを身にまとい、サングラスをかけた30代くらいの誰が見てもイケメンと言うであろうこの男。未央奈との行為を終え、浸っていた気持ちの悪い男の元にやってきた。
「あぁ、これはこれはMr.ゼロ!ありがとうございます!…おかげさまでw デュフフ…」
「そうかそうか…よくやったよ佐々木さん、あんたはお役御免だ」
銃口を向けるMr.ゼロと呼ばれる男。
「ヒッ…な、何を!!」
「もう時期に警察が来る頃だ、あんたが捕まってこちらのことをペラペラ話されると困るんだよ、せいぜいあの世で余韻に浸ってな」
躊躇なく引き金を引くとおでこに一撃で命中し、弾丸が脳天を貫き佐々木は即死した。
Mr.ゼロは薬莢と弾を拾うと、後からやってきた部下に命じて未央奈を連れ去り、どこかへと消えて行くのであった。

1時間後

ガンッ!
「そこまでよ!」
廃工場のドアを開け、銃口を向ける飛鳥、美月、豊の3人。だが、勿論そこには未央奈の姿はなく、残っていたのは佐々木という男の死体だけだった。
「やっぱり…予想通りね…」
「一足遅かったみたいですね…」
「こりゃ…1人の仕業じゃねえな…」
呆然としてしまう3人。
「それに見て、弾痕は1つしかないのに1発で脳天を貫いてる…素人じゃないね」
「となると…俺達はここでお役御免かもな」
「なんでですか!?」
豊の言葉に声を荒らげる美月。
「まだ確定な訳じゃないが…ここ半年くらいで女性が連続で誘拐された事件が未解決だっただろ?おそらく、これも同じ組織が絡んだ反抗だろう、無差別でありながら共通してるのはルックスのいいモテそうな女という点を見ても目的はおそらく海外に向けての人身売買と見て間違いない、こういう事件は組織犯罪対策課に任せるのが筋だ」
「そんな…それなら尚更許せない…私達で捜査したいです!!」
真っ直ぐに力強い目で豊に訴える美月。
「俺に言われても…なあ…」
戸惑ってしまい頭をポリポリとかく。
「そういうことよ!」
工場に突然別の女性の声が響いた。
「誰?」
その女性に飛鳥が視線を向ける。
「組織犯罪対策課 生田絵梨花です。本件に関する捜査は私達が担当することになったので捜査一課のみなさんには今すぐに撤収して頂きます」
まるで女帝のような風格を出す絵梨花。
「そんな…!この事件は私達がずっと…!」
「山、それがルールなの悔しいけど仕方ない、帰るよ」
「でも…!」
「山さんっていうのかしら?」
「山下です!」
目をかっぴらく美月。
「被害者も助けられず、容疑者まで殺された無能刑事がとやかく言う資格は無いと思うけど?」
「くっ…」
悔しいが絵梨花の言う通りだ。あと何時間か早く捜査を進められれば黒幕を捕まえたとは言わないまでも、被害者を助け容疑者を確保し、進展させることが出来たはずだ。
美月は唇をギュッと噛み締めて廃工場を去っていった。
「貴女、名前は?」
「申し遅れました、捜査一課の齋藤飛鳥です」
「齋藤さん、部下の教育はしっかりお願いしますよ」
「山は部下じゃありません、私と同じ警部なので必要ありません」
「あぁ…そう」
「失礼します」
飛鳥も足早に去っていく。
「驚いたか?」
残っていた豊が絵梨花に言葉を発する。
「俺達はノンキャリアの20代前半で警部になってる、確かに今回は捜査で遅れをとった俺達の失態だが、あんたらが俺達よりも優秀な捜査をするとは思えないな」
「無礼な!!」
「まぁいい、これは大事な仲間に失礼な態度をとったあんたへの仕返しだ、俺も熱くなって悪かった、それよりもくれぐれもよろしく頼む。俺達だって無念なんだ、必ず黒幕を暴き出してくれ」
「言われなくても!」
「じゃあな」
こうして、捜査一課の3人はこの事件に隠れた大きな闇を感じながら捜査から外れることとなった。

警視庁組織犯罪対策課捜査本部

「というわけで、あいつらをギャフンと言わせるためにも、早く犯罪組織を撲滅させるわよ!」
警視庁に帰っても荒ぶっている絵梨花。
「生田さん、そんなカリカリしないでくださいよ、今回のヤマは結構厄介ですよ」
宥めているのは部下の賀喜遥香である。
「山?山下!?あの女がなんて!💢」
「言ってませんてそんなこと…」
「とにかく!かっきーは弾痕から使用拳銃の特定!分かったらその拳銃が流れたルートを探して!」
「はい!」
(捜査一課なんかより…絶対私の方が…!)


ブラッキー ( 2022/11/13(日) 17:17 )