社会人T
01
 やっとここまで嗅ぎ付けた。
 

 僕、椎葉 凛(しいば りん)は国公立大学理系でそこそこ名の知れた大学の出だと自負している。
 同級生たちは名だたる有名企業の研究施設や大学院に進むものもばかりだった。

 しかし、僕の就職先は理系知識など全く関係のない、いわゆるテレビ局にした。
 その目的はただ一つ、


 彼女を追って。

  ◇

プルルルル
僕のスマホの画面には彼女の名前が映し出されていた。

「もしもし」

緊張で頭が真っ白になる。

「あ、そうですか、その日は午後までお仕事が入っているんですね。
いやいや、仕方ないことじゃないですか。ならば、ドライブはやめてディナーをご一緒いたしましょうか。
それでは、今度の土曜日の午後7時に駅前で待っています。駅に着いたら連絡して下さい。
あ、あと一応軽い変装か何かしてきて下さい。一応トップアイドルだったんですから。
それでは、また土曜日に。」

 電話を切ると手が震えていた。



 僕は6時には着いていた。
デートが決まってからオシャレに関しては全くと言っていいほどない知識を絞り出し、できる限りの装いをした。
さらに、根が人見知りな僕は沈黙が訪れないよう会話のネタも練り、準備はバッチリだ。


7時までまだ15分もある。
 そう自分に言い聞かせて心を沈めているちょうどその時、


彼女はやって来た。







■筆者メッセージ
はじめまして。

自分の処女作です。


ですが、最終作になるかもしれません。

む、難しい。


あつ ( 2016/02/03(水) 17:09 )