君に出会えたから - 第2章〜バカとばか〜
第21話
「か、返してくださいっ♪」
俺が必死になって考え出した最大限努力した笑顔と口調で言い放った返してくださいは呆気なくゆりあの冷たい視線により粉砕された。

「うわー・・・翔ちゃんそんな趣味もちだったんだ、ふ〜ん」
ゆりあがさらに冷たい視線で見てくる。

「ゆ、ゆりあがやれって言ったんだろ!」

「え?返してほしかったらやってって言ったんだよ?別に強制じゃないよ?」

「いいから返してくれよ!」

「はーい」
そういうとあっさりとゆりあが財布の中から俺の諭吉さんを取り出しこっちに差し出してきた。
俺がそれを掴もうとするとゆりあが机の上に置いて言った。

「その代わり、残ったらこの1万円で払ってね?」
恐らく高確率でそうなるような気がしてならないが今はとりあえず諭吉さん奪還作戦を遂行すべきだ。
「分かった。分かったから返しくれ」
そう言うとやっとゆりあが1万円を返してくれた。

「ちぇ・・・私、今金欠だからお金ほしかったなー」

「そんな可愛い顔しても金はやらんぞ」
俺とゆりあが完全にバカ丸出しの会話をしていたので気付かなかったがどうやら他の部員達はジャンケンをしてなぜか盛り上がってるらしい。
俺は様子が気になって仕切りを取り外すと部員たちが謎の黒いドリンクを囲むようにしてじゃんけん大会を繰り広げていた。
恐らく負けた誰かがあれを飲むシステムなのだろう。そして予想できるかぎりあれを作ったのは部長だろう。ここ数日であの人のしそうなことはなんとなく把握できた。

「おい、霧崎!お前らも混ざれよ!」
俺がコッソリ見ていた事に気づいたハゲ先輩がどう見ても殺意のこもった目線で俺の方を見ながら呼んでくる。たぶんこれで俺をダウンさせてあの席を奪い取るつもりだろう。俺は別に譲っても構わないのだがゆりあが何というか分からないし、なによりあの大量の肉を押し付ける事になってしまう。
それはそれで面白そうなんだが・・・とか考えつつ俺はジャンケンの輪に加わった。

・・・加わるんじゃなかった。まさか32人の部員の中で最後までジャンケンに負け続けるなんて予想もしてなかった。
AとBの2ブロックに分けられていた中で俺はBブロックに入り16人の中から3人が決勝ブロックに進むシステムだった。その16分の3人の中に俺は見事に入った。
その時点では「ま、まだ6人も相手がいるし・・・」なんて事を言っていたが、1人、また1人と人が減っていくたびにかなり不安になり1対1になり呆気なく負けた。
負けたので仕方なく罰ゲームのドリンクを飲もうと口に近づけた瞬間、俺は瞬時にグラスを机に戻した。
どう考えても匂いがおかしかった。

「ぶ、部長これ中身何入れたんですか?」
俺が部長にレシピを求めると部長は笑いながら言った。
「えーっと、ドリンクバー全部入れてそれで・・・なんだっけ焼肉のタレの甘口から辛口までを投入しました」
予想外なものを放り込んでくれたものだ。ドリンクバーまでならまだ味も見た目も良かったのだろう。しかしそこに焼肉のタレはダメだ。

「「「一気!一気!一気!」」」
部員全員がそう言い出した。しかも他のお客さんまで参加している。
ここで飲みたくないとか言ったら熱が冷めてしまう。
俺は覚悟を決めて一気に飲み干した。



■筆者メッセージ
こんにちわ、Aliceです。
今日で天国が終わります。
学校は?不登校になっちゃったのって?
8日からなんで問題ないです。

Alice ( 2014/01/06(月) 14:26 )