第2章〜バカとばか〜
第20話
話し合いの中で一番時間をとったのは誰が2人ペアの席に座るかだった。
なぜかこの店には3席だけ4人ではなく2人で焼肉を楽しめる席があった。
すでに2席は他のお客さんで埋まってしまっていたのでラスト1席だった。
そこで誰があの席に座るかでかなりの時間を要してしまった。実際、俺はジャンケンで決めればいいと主張したのだが他の4人の男達(全員先輩)にすぐさま却下された。
このままではまた喧嘩がと心配したらしい石原部長が登場し話し合いの輪に加わった。
俺たちは無言で石原部長の指示を待った。
やがて石原部長が口を開いた。
「どう考えてもこのペアじゃ霧崎&木崎ペアがあの席に座るべきだと思わんかね?」

「なんでこんな新米カップルに俺たちラブラブ熟年カップルがあの席を譲らなきゃならんのだ?」
先輩!熟年はオバハンですよオバハン!と突っ込みたかったがなぜか口にはできなかった。
「こいつらが新米?何を言っているんだハゲよ。どう考えてもお前ら熟年ハゲカップルよりもこの若々しい霧崎ペアのほうがいいだろ?」
普通の人間ならここで殴りかかってもおかしくない言動だったが石原部長はそれが許されてしまう謎のスキルもちだった。その代わりと言わんばかりに俺とゆりあは熟年ハゲカップルのハゲ先輩にものすごく睨まれたが。そこからもう誰も発言をしなかったので必然的に俺とゆりあが伝説の席に座ることになった。

座ってから気がついたのだがこの席はどうやら外から見られないように仕切りのようなものがついていた。完全にラブラブカップルのために作られてんなと俺は感心した。

しかも注文は最優先だし届けてくれるのも最優先だった。
そんなVIP仕様のおかげでゆりあが次から次へと注文し、しばらくは注文しなくてもいいぐらいに肉の皿が積み上がっていた。
しかも一切食べないままゆりあが注文したのですでに食べきれるかどうか不安になっていた。しかも、確か入口に「カップル席はお残しひと皿1万円」と書いてあった気がする。
ひと皿で1万円も取られるとなると部長が預かった部費では絶対に払いきれないだろう。
すでに10皿は注文してある。しかもひと皿ひと皿無駄に量が多い。

「ゆりあ、お前これ全部食べれるの?」
俺は不安げに聞くとゆりあがすぐさま笑顔で返事してきた。
「もっちろーん!翔ちゃんが全部食べてくれるんでしょ?残ったら」

「食べないよ?絶対に食べないからね?ゆりあちゃんご自身で頼んだんだから全部食べてよ?」
なぜか、ゆりあちゃんになってしまったが当の本人はさほど気にしていないようだった。

「え〜でも食べないと翔ちゃんの財布から野口英世さんいなくなっちゃうよ?」

「え、なんで英世さんなの?諭吉さんじゃなくて?」
まさかあれは確かに諭吉さんなくなってもいいなら残していいよとい魔の看板だったはず。
まさか英世さんまで降格していたのだろうか。
「だって1万円取られるんでしょ?」
そうだ、忘れてた。英世か諭吉かで思い出してたせいで完璧に忘れてた。
この子ばかなんだった。
俺の中で勝利が1つ増えていた。
「ゆりあ、1万円は諭吉さんだぞ?ほれ」
俺がそういいながら財布の中に1枚だけあった諭吉さんを見せるとゆりあがそれを掴みそのまま何事もないかのように自分の財布にしまっていた。
「おい、お前。俺の一万円返せ」

「え?一万円?なんのことでございましょー?」

「今俺の1万円とったろ?返してください!」

「えー可愛く返してって言ったら返す〜」
このばか覚えてろと心の中で恨みながら俺は必死にどんな感じが可愛いかを考えた。


■筆者メッセージ
どうも、Aliceです。
前回の筆者メッセージで言ったマネージャーを誰にするかですが
今現在、2枠埋まりました。(早い者勝ちです)
恐らくゆりあ以外のマネージャーの登場機会は少なくなると思います。

まー冬休み終わるまでに出てこなかったらコッチで考えましょうかね。

それでは。
Alice ( 2014/01/04(土) 22:34 )