君に出会えたから - 第2章〜バカとばか〜
第17話
・・・正直、ゆりあがここまで足が速いなんて微塵にも思っていなかった。
俺はゆりあの殺気を感じ取った瞬間、なにも考えずに一目散に部室に向かった。そこまではよかったんだ。部室までは約120m。まさか120m程度で女の子に・・・ましてや、ゆりあに追いつかれるなんて思っていなかった。仮にも中学のときに全国制覇した男の子がスポーツなんてろくにやってない女の子に短距離走で負けた。
別に俺はそんなことで精神的ショックで倒れたりするほど軟弱ではないのだが。

結局、ゆりあに捕まった俺はズルズルと教室に引きずられていった。そしてイスに座らされ、ゆりあが隣にあった机と椅子を俺の方にむけ懇談のような形になったのだが未だにゆりあが殺気を怖いほど放っていたので俺は顔を上げることすらできなかった。

「ねぇ翔ちゃん?私さ言ったよね?あの事はもう忘れてって」
言うまでもないがあの事とはもちろん“ゆりあさんの胸みちゃった事件(今俺が命名)”だ。
昨日の入学祝いパーティが終わった後のゆりあとの会話の中で寝るまでそのことで釘を刺されていた。しかも思い出したら怖い目に合わすという恐ろしい事まで言われた。
「は、はい。言いましたね」

「別にね?私は翔ちゃんに胸を見られたことはそんなに気にしてないんだよ?あそこで見るなっていう方が無理だと思うからね」

「おっしゃるとおりですね、はい」

「だからもうその事はどうでもいいの」

「じゃぁ許していただけるということで・・・?」

「うん、そのことは許してあげる。でもね?」
ゆりあはそこで一旦、言葉を切ると一度深呼吸していった。
「もう一度いうけど別に見られるのはどうでもいいの。でもね?翔ちゃんがその事でバカにしてくるのはどうも許せなくって、しかもちゃんと昨日言ったでしょ?思い出したら罰ゲームだって」
ちなみに罰ゲームの内容は、ゆりあ母が俺の母さんを通じていつの間にか手に入れていた俺の黒歴史とでも言うべき出来事を全校生徒に教えるというなんともえげつないものなのだ。
別に俺は大した黒歴史はないはずなのだが、やはり母親から見るといくらでも出でくるものらしい。もちろん自分が覚えている中であれだけは言われたくないというものもいくつか思い当たるが流石に学校での出来事を母さんが知るはずもない。

俺がそこまで必死に考えたところでゆりあが再び口を開いた。
「まーでも今回は私が話を振っちゃったから仕方ないかなー」

「な、なら許してくれるですね!?」

「次はないよー」
ゆりあが笑顔で言ってくる。やっとゆりあの背後から殺気が消え代わりに輝いて見えた。
俺はもう二度とあの事は思い出すまいと誓いながら教室を後にしようとしたところで再びゆりあに呼び止められた。
「ねー翔ちゃん。部室まで連れてって」

「自分で行けよ、自分で」
内心、これ連れて行かないと罰ゲームとかじゃないだろうなと怯えながら答えた。

「だって翔ちゃん追いかけたら足痺れて動かないんだもん」
どうやらあれが火事場の馬鹿力というものらしい。にしてもあれだけで火事場が発動するとは恐ろしい。それに痺れて動かないとは重症ですな。
仕方なく俺はゆりあをおぶって教室をあとにした。


■筆者メッセージ
どうもAliceです。
宿題多すぎです。こんなの今日と明日で終わるはずが・・・
残るは英語数学・・・無理ゲー
仕方ないのでせめて5ページずつでもやらねば・・・

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Alice ( 2013/12/30(月) 15:27 )