01
「そこに車を停めてください」
車をしばらく走らせ山の入り口に近づいてきた。入り口付近になるとピースが車を停めるように指示をした。
「こんなとこにあんのか。まあ秘密基地にはうってつけってとこだな」
「ここから少し歩きになります。こっちです」
見渡す限りの雑木林。いかにも悪の根城がありそうな雰囲気を醸し出していた。パルたちに案内され歩みを進める泰斗。しばらく歩くと少し先に石造りの橋が見えた。その少し前でパルたちは足を止めた。
「どうした?突然止まって」
「あそこにある黒い柱が私たちについていた腕輪の感知センサーです」
パルが指を指す林の中に黒い柱が立っていた。泰斗が近くに寄ってみるとこの場所には似合わないであろう最新鋭の機械があった。
「こりゃあすげえな。なかなか手に入るモンじゃねえぞ」
「ここだけじゃありません。一定の距離でプリズンを囲むようにこれが立っています」
確かに離れた場所に同じようなものが見える。例え建物から抜け出したとしても、この機械の間を越えれば体中に毒が周り即死。完全なる監獄である。
「想像するだけで恐ろしいな。で?その刑務所自体はまだ先か?」
「はい。さっきの橋を渡ってさらに森の奥にあります」
「そうか。その前に…おい!」
刑務所の場所をパルたちに確認すると、泰斗は突然後ろを振り返り叫んだ。パルとピースは不思議な顔で泰斗と泰斗が叫んだ方を見た。
「尾けてきてんのは始めから分かってんだ!出てこいよ!」
「……流石だなぁ」
木の陰から1人の男が出てきた。スーツ姿のその男は笑みを浮かべていた。
「誰ですか?まさか……プリズン側の人間?」
「違えよ」
パルたちは何者か分からないため、目つきを鋭くさせるが、泰斗が口を挟んだ。
「尾けてくるぐらいなら一緒に来りゃいいだろうが」
「いやぁ、職業柄奴らにバレるとマズイんでな」
「……あの泰斗さん、こちらの方は?」
仲睦まじく会話する2人。どうやら泰斗の知り合いのようだが。『職業柄』という言葉が気になったパルたちは申し訳なさそうに間に入る。
「あぁ、こいつは市村源次。警視庁捜査一課の刑事だよ」
「け、刑事!?」
刑事と聞きパルたちの目つきが変わる。なんせ警察官僚までプリズンの計画に関わっているのだ。警戒するのも無理はない。
「大丈夫だ。こいつは警察の中でも信用できるやつだし、こいつの上司も信頼できる人だよ」
「いやぁそこまで泰斗に信用されてるとは
それを聞いてパルたちは胸をなでおろした。なにより警察の中で協力者がいるのは心強い。
「実は刑事部長直々に俺らの班にこの件を極秘で捜査してくれと言われてな」
「親父から?」
「え、泰斗さんの父親って刑事部長なんですか!?」
「血は繋がってねえけどな。俺の知る限り権力に負けないほど強い正義感を持った人だよ」
まさか警察の幹部にまで協力者がいるとは。いやそれよりも泰斗の父親が警察幹部というのがまず驚きだった。
「とりあえずプリズンに行こう。話は歩きながらでも」
源次に言われ泰斗たちは歩みを進めた。