01
咲良にとって開いてほしくないドアが開いた。
あの男、研児がダンボール二つを台車に乗せて現れた。
中身は見なくても咲良には解ってしまった。
研児が咲良に着せて、研児の欲を満たす為のコスチュームなのだと。
ダンボールから紙袋を研児が取りだし、咲良に渡した。
「咲良。この後、エチュードをするぞ。その前に朝ご飯にするけどな。」
女優志望の咲良には馴染みがある言葉、エチュードとは台本のない即興劇と言われる芝居の一つである。
紙袋の中身は、パッと見て、制服と一枚の紙だった。
エチュードとはいえ、多少なりに研児が設定を考えたようだ。
クローンとはいえ昨晩から何も食べていない咲良は腹ペコ状態で、出された料理をペロリと食べてしまった。
「咲良。紙を読むんだ。」
「はい。」
設定の書かれた紙を読んで咲良はゾッとした。
「さぁ、着替えるんだ。」
「はい。」
紙袋の中には制服とパンツしか入っていなかった。
咲良は全裸の状態からパンツを履き、シャツ、スカート、ジャケット、リボンという順番でコスチュームを着ていった。
研児が用意したのはただの制服ではなく、完全にHKT48の楽曲、メロンジュースの制服衣装だった。
「さぁ、踊ってもらおうか?」
メロンジュースのメロディが流れ、咲良はメロンジュースを踊らないといけないのだった。
「ハァハァ」
普通に踊っただけとは思えない程、咲良の息は上がっていた。
「次の行程だ。」
踊りを見ながら、研児はソファーに移動していた。
「失礼します。」
アイドル、宮脇咲良の枕営業が今回の設定である。
宮脇咲良がどういう人物かを研児(取引相手)は見ていたという筋書きである。
「咲良ちゃん。お疲れ様。早速だが、私のを舐めてくれないか?」
「はい。失礼します。」
オリジナルの咲良にとって、来年の総選挙までの期間は大事な時期という情報がクローンの咲良にも入っている為、このシナリオはあり得なくない話だ。
「上手だね。」
研児も役になりきっている為、咲良の頭を撫でる。
「出すぞ。咲良ちゃん。飲むんだぞ。くっ。」
昨晩したのに研児はおびただしい量の精子を出した。
それを咲良は飲んでいく。
しかし、それを中断するように研児が咲良の胸に手を伸ばした。
「やっぱり咲良ちゃんはノーブラだったか。」
そう、研児は咲良の朝食に一服もっていたのだ。
「おっぱいが踊る度に不規則に揺れていたよ。」
そんな研児の言葉は咲良には届いていなかった。
咲良は、オリジナルの無事をひたすら祈っていた。
(オリジナルの私、枕営業なんてしないで。自分の力で頑張って。)
枕営業のエチュードで一日が費やされるのだった。