最終章
御役御免
村に秋が訪れた。

村民、学校関係者と真夏、みくにも純一の子が宿った。

カマキリは子を成すと、メスにオスが殺される。

元々余所者な純一は、村を去ることにした。

しかし、夜中に脱出しようとするが、車の鍵が見つからない。

「純一さん。探し物はコレですか?」

そこには、車の鍵と置いてきた筈の結婚指輪、置き手紙を持った真夏が居た。

「私は、伊藤真夏。貴方の妻です。」

「パパ。」

玄関先に、みくも現れた。

「純一さん。村を出るなら、私を殺してください。」

そう言う真夏の掌中には普通の包丁があったが、その手は震えている。

「俺は、・・・。」

決心を固め、真夏の方へゆっくりと純一は歩き、包丁の柄に手をかけた。



柏木先生達学校関係者が後に秋元の家へ足を入れたとき、彼等の息を感じることはなかったという。

春一番が吹いた頃、一つ目の産声が村に響いたが、その父親に抱かれることはなかった。

■筆者メッセージ
最後から書いていくパターン。
どちらとも採れる結び。
死亡(良くて心中)パターンか脱走パターンと採るかは読者の皆さんにお任せします。
光圀 ( 2021/11/09(火) 05:04 )