転生
朝がやってきた。
○○は真夏の消滅がパワーダウンさせていたが、夢だと思って、いつも通り過ごすことにした。
歩きながら、夢であって欲しかったけど、昨日の真夏とのやり取りがスマートフォンに残っていた。
歩きながらのスマートフォンの操作は思わぬ事故や〜とどこかのショッピングモールのアナウンスのような状況なので、当然のごとく、○○は通行人とぶつかった。
「ごめんなさい。」
顔を上げたとき、そこに立っていたのは、高校の制服を着た真夏だった。
「え?真夏?」
「そうだよ。○○。」
「でも、なんで?」
「私達の気持ちが神様に通じたみたい。人間に転生出来た。」
「良かった。真夏。改めて、俺と付き合ってほしい。」
昨日の時点で告白はしているけど、○○は真夏に手を差し出しながら、頭を下げた。
「勿論。でも、○○。時間、大丈夫?」
「急がないと遅刻じゃん。行くぞ。真夏。」
真夏が返事と同時に手を掴んできたので、○○は手を繋ぎ直し、高校へ向かって、走り出した。
◎
真夏が人間に転生して初めての土曜日、○○と真夏は水族館へやってきていた。
イルカショーでお客さんをステージに上げる演出で、イルカのカン君がお客さんの女性にキスをした。
そのとき、真夏が○○の袖を引っ張ってきた。
「ねぇ、○○。キスして。」
二人が居るのはショーで水を被る可能性がない客席の一番後ろだ。
「チュッ」
「○○。この先はいつするつもり?」
答えを考えるのに夢中になり、○○にはイルカショーが頭に入ってこなかった。