消滅
行きはよいよい帰りは怖いという言葉があるが、朝あれだけはしゃいでいた真夏も消滅する運命を前に静かになっていた。
周りに人がいないのを確認して、○○は口を開いた。
「真夏。ごめんな。」
「仕方ないよ。白石先輩に彼氏がいたんだし。」
「真夏。俺、お前が好きだ。」
「私、妖精だよ。しかも、今日消えるんだよ。」
「知っている。それに解っている。それでも、お前とデートがしたい。どこか行きたいところは?」
「○○の家。○○の日常が見たい。」
「姫の仰せのままに。」
少しだけ元気になった真夏と○○は家へ帰っていった。
後半を聞いている同期がいて、○○が最終学年の劇で、そういう配役にされるのは別の話だ。
◎
○○はいつも通り、勉強をして、夕飯を食べ、入浴をして、パジャマに着替えたが、真夏の消滅があるので、眠るわけにはいかなかった。
「真夏。オセロやるか?トランプはやれるのが少ないからな。」
「ルール教えてね。」
「白と黒の石?コマかな?コマを先ず二つずつ置いて、自分の番に一つ置いて、間の相手のコマを裏返す。より多く自分のコマが多い方が勝ちって遊び。」
「解った。」
「俺は説明がてら黒にしたから、真夏は白で良い?」
「うん。良いよ。それで、次は私の番だね。ここに置いてくれる。」
「はい。」
「やった。変わった。」
こうして、○○と真夏は普通の人には○○が一人でオセロをしているスタイルのオセロを何度かして夜は更けていった。
「ねぇ、○○。そろそろ寝ない?」
時計はほぼ正午を指していた。
「なぁ、真夏。隣で寝てくれる?」
「うん。」
○○はベッドに寝ると、右腕を広げ、その上に真夏は寝転んだ。
「ねぇ、○○。私も○○が好きだよ。」
「この状況で言われてもな。」
「○○。キスして。」
「チュッ」
運命とは残酷なもので、二人の唇が触れたとき、夜の正午となり、真夏は消えた。
「さようなら。真夏。」
○○は、真夏の消滅を見届けると、目を閉じて、眠りについた。