熱帯夜
恵さんの居ない日に怜ちゃんはやってくる。
親御さんには友達のところへ行ってくると言っているらしい。
「怜の特製玉子焼き、お待たせ。」
一人暮らし時代は卵かけご飯か、目玉焼きだった俺にとって、懐かしさがある。
四月の頃は、見た目が悪く、味だけ良かった玉子焼きがあったのさえ、懐かしい。
怜ちゃんは、高校とは別の制服を着ている。
「はい。先生にはビールとお薬。」
怜ちゃん曰く、シラフで自分を抱いたら姉に弁明が出来ないということらしい。
「先生。私、先生の赤ちゃん生みたい。」
怜ちゃんの呟き、学生時代の思い出、複合条件で思い出した。
俺が教師を目指した理由、安定した収入を得る為に、公務員を目指していたこと、歴史の素晴らしさ、世界の素晴らしさを人に伝えたかったこと、建前な欲望を上げればそうだが、結婚願望に関しては、同僚の女教師か元生徒と結婚したかったのだと。
怜ちゃんが、俺の中の火に油を注いだ。
もしくは、鴨がネギを背負ってきたと表現すべきかもしれないが、どうでも良い。
程よくアルコールが回り、俺は虎になった。
意識を取り戻したとき、怜ちゃんが俺の腕枕で眠っていた。
驚いたのは、ゴミ箱の中で、コンドームを一箱開けていたことだった。