伝言
光圀と美音の会話を聞いていたのは、恋愛の観察が三度の飯より好きになった魔法使い白間美瑠と、どうしても二人の会話が気になった少女田中美久である。
美瑠の方は魔法を介して聞いている為、一言一句漏らさずに聞き取ることが出来たが、美久の方はそうもいかない。
美久が聞いた部分はこうである。
「・・大塚さんなら私の気持ち解るでしょ?」
「ちょっとだけ、昔の莉乃を思い出した。俺で良いって言うなら、一肌脱ごうじゃねぇか。」
「よっ、クニさん。」
「俺とお前の仲だ。これからは俺のことはクニさんと呼んでくれよ。美音。」
「はい。クニさん。」
このとき、美久はスマートフォンを起動させ、今までのことをメッセージに打ち込む。
その間も二人の会話は続く。
「まずは、何が知りたい?順番にやらないといけないぞ。」
「やっぱり、まずは厚焼き玉子からお願いします。」
「帰ったら作って作り方教えるよ。」
「お願いします。」
身体を翻させた光圀に、咄嗟に美久は物陰に隠れてしまった。
そして、メッセージを完成させ、莉乃へと送信するのだった。
「さしこちゃん(泣)大塚先生とみーおんさんが内緒話していたよ。それだけだったけど、もしかして、これって浮気なのかも(汗)」
「どんな会話していたか、分かる?」
「みーおんさんが大塚さんなら私の気持ち解るでしょ?先生が昔の莉乃を思い出した。人肌脱ごうじゃねえかって。」
この文章なら完全に浮気の線のままである。
「後、俺とお前の仲だって言って、先生の呼び方がクニさん、先輩が美音になったよ。」
「とりあえず、帰ってきたら、本人に聞いてみるわ。」
不安と怒りが混じった莉乃が福岡にいるなど、光圀は知る由もないのだった。