初体験
美音は廊下で進士を待っている。
その顔が赤いのは、風邪をひいているからではない。
今朝の母親に吹き込まれたことが原因である。
「美音。これ。」
お母さんが美音に渡したのは、バスタオル三枚と一万円札一枚。
「お母さん。タオルと一万円って、一体何?」
「お父さんと二人目を作りに、ってのは冗談だけど、旅行に行って、家を開けるからそのときのお小遣い。」
「タオルの意味は?」
「いつまで鉄のパンツを穿き続けるの?早く進ちゃんを紹介して欲しいんだけど。」
「え?なんでお母さんが百田さんの名前知っているの?」
「やっぱり、退院のときのマネージャーさんだ。」
「思い付いたのが、百田さんなだけなんだけど。」
「まぁ、私達が旅行で家を開けるってことは、この家にはあなただけ。結婚前に関係を持つのは悪いことじゃないわよ。私達の頃も友達が・・・」
母親との会話を回想していた美音が現実に戻ると、目の前に進士がいた。
「熱はねぇな。」
「百田さん。いつの間に?」
「ついさっき出勤してきたら、向井地さんが顔を赤くしてポーっとしていたから心配になったんだよ。」
「百田さん。今度、家に来てください。」
「まだ早いんじゃない?」
進士の解釈は彼女の家に行くということは彼氏として紹介されるということだが、その真意はただ一つだった。
◎
ここは美音の部屋、そのベッドで進士と美音は一緒に寝ている。
その理由は母娘揃って同じだからである。
「百田さん。寝ましたか?」
「・・・(寝れるかー!)」
「私って、魅力ないですか?」
そう言いながら、進士の手をとり、美音は自身の胸部へと導いた。
「がっつくと嫌われるって思っているなら、してくれない方が嫌です。んっ。」
進士が手を動かして、美音の胸を揉んだのだ。
「む、美音。良いのか?初めてなんだろ?」
「痛くても、女の子ならいつか通る道です。それに進士さん以外とするのはもっと嫌です。」
「美音。優しくするつもりだけど、乱暴だと感じたら、殴ってくれて構わないから。」
「はい。」
そうして二人はどちらともなく、唇を近付けた。
美音が唇を少し開いた瞬間、進士は舌を入れ、美音もそれに応える。
キスを終え、二つの唇が離れると銀のアーチが二人を繋いで離れた。
「脱ごうか?お互い、準備もあるでしょ?」
「はい。」
二人はそれぞれ、出血時用のタオルとコンドームを用意して、着ている服を脱いだ。
ベッドに横たわる美音、コンドームを着用し、ほぼ正座する進士、それも数秒のこと、ゆっくり移動し、進士は口を開く。
「行くよ。美音。」
「来てください。進士さん。」
二人、二つの影は重なっていった。
「美音。大丈夫?」
「レッスンとかの影響ですかね。思ったより痛くないです。」
「美音。我慢できない。」
言うが早いか進士は腰を動かした。
「進士さん。良いんですよ。避妊しているんですから、私の中に出してください。」
美音が言葉を発すると体内でも、進士を迎え入れるよう変化した。
「美音。出る。」
進士は美音の中の避妊するゴムの中へ射精した。
「え?」
突き入れの瞬間、美音は白い風景を見たのだった。
「美音。美音。」
進士の声で我に返った美音が目を覚ますと、進士と自身は下着を身に付けていた。
「良かった。終わったと思って美音を見たら、気を失っていたから、心配したよ。」
「進士さん。私」
進士はしっかりと美音を抱き締めて、口を開いた。
「美音。俺は待っているから。卒業するまでは、先輩達みたいに俺も美音のこと、支えるから、これからも三代目総監督頑張ろう。」
「はい。」
「その前に事後処理のシャワー浴びるか?」
「もう。」
そう言いつつ、美音は進士にもたれかかり、進士の鼓動に揺られながら、微笑んだ。