鼓動
進士が出勤すると、昨日同様廊下に美音が立っていた。
「百田さん。ちょっと良いですか?」
昨日の一件があるので、忘れてほしい等と言われると思って、進士は美音に近付いた。
すると、美音は進士に抱きついた。
「ちょっ、向井地さん!?」
「顔を見て言わせてください。百田さんのことが好きです。」
「向井地さん。離れて。こんなところ誰かに見られたら、他のメンバーに示しがつかない。」
「百田さん。本当にそう思ってます?さっきからずっとドキドキ言ってますけど。」
「当たり前だろ。好きになるなんてどうかしている相手を好きになって、そいつと両思いで、そいつに抱きつかれているんだから。」
「なら、抱き締めてください。」
「だから、メンバーに示しがつかないって。」
そう言いつつも進士は美音の背中に自分の腕を回して、美音をしっかり抱き締めた。
「そういえば」
進士の言葉に美音が反応した為に、進士は美音から身体を離した。
「向井地総監督は仕事に支障を出さないということでしたね。切り替えの時間、仕事の時間です。」
進士は美音に自身の腕時計を見せて、数歩歩いて、振り向いた。
「早くしないと、本当にメンバーに示しがつかないですよ。向井地さん。」
「はーい。」
美音は、わざわざ自分を待ってくれる照れ屋なマネージャーの元へ向かった。
ここに新しいマネージャーとアイドルのカップルが誕生した。