処分
美音が記憶吸収装置の餌食となり、進士の記憶が消えた。
「向井地の頭に着いた物体、仮に記憶吸収装置と呼ぶが、あれに去年、大塚君も被害に遭っているが、大塚君はちょうど、お昼ご飯を考えていて、事なきを得たそうだ。」
「だったら、科捜研、警察機構に同じものがあるんじゃ?」
「大塚君もそう警察署内で吠えたそうだ。同じものは存在した。しかし、一年前のそれにあって、今回のにないものがある。記憶チップと言うべきものが無傷じゃなかったんだ。」
「MRI等で検査しても、ほとんど異常はないだろうけど、記憶の欠落はあるだろうな。」
「大塚さんは?」
「尾崎さんに連絡をとって、謹慎処分になった。何分今年のことで、何もない筈はないからな。」
進士は複雑な心境になった。
進士の足は大塚寿司に向かった。
「お客さん。今日は店終いで、進士お前でもな。」
「否。親父さんに相談に乗ってほしくて。」
「どうした?」
「親父さんは人を恨んだことはありますか?」
「昔、兄貴を恨んだよ。この店を継がずに、女と駈け落ちしたからな。でも、兄でも何でも恨んだところで何も変わらないから、目の前のことを一生懸命やったよ。」
「そうですか。」
「問題が解決したなら、帰りな。」
「親父さん。ありがとうございました。」
(若。進士。頑張れ。)
次の日、進士の姿は病院にあった。
「失礼します。」
「えっと・・。」
「向井地さんの担当マネージャーの百田進士です。これを届けに来ました。」
そこには一冊のメモ帳があった。
「記憶を失っているなら、もう一度覚えてもらうだけ、その代わり、今度は失わないように、そこに書いておいてください。」
「ありがとうございます。」
(これはあかん。)
病室の前で様子を見ていた横山由依は携帯使用可能エリアに戻り、スマホを操作した。
「さしこ。あんたらと同じマネドルカップル三号が発生しそうなんやけど、どうしたらえぇかな?」
すぐに既読が付き、返事がきた。
「まずいって思うなら、止めてみれば?彩ちゃんも言っていたけど、私達と同じなら絶対止まらないから。」
光圀は謹慎期間に太平洋戦争の資料を集める旅に出るのだった。