出会い
消失
この世に完璧な人間はいない。

昔のドラマの台詞、人という字は人と人が助け合って成り立っている。

医者じゃないから、両親を失った光圀の目の前で、家族同然の女性に危険が起きたとき、取り乱さない筈がなかった。

危険が起きたとき、愛しの男性を思い浮かべ、目を開けたら、その男性の腕の中なら、女性として、天にも昇るような気持ちだろう。

その二点が交わり、愛を紡いだ。

それらを根掘り葉掘り聞こうとしている存在、向井地美音から光圀は逃げるべく、スタジオ近辺の外にいた。

本番ではない為、光圀は着信を拒む理由はない。

正輝から着信が入ったのだ。

「正輝。どうした?嫁と喧嘩でもしたか?」

「兄さん。もし、外にいるなら、早くスタジオに戻って、兄さんを殺人鬼が飛び道具で狙っている。」

「どういうことだ?」

「僕も解んないけど、そう兄さんに伝えてくれって言われたんだ。」

「なら、戻るわ。」

通話を終えた光圀の前に長袖、長ズボンの男が一つの球体を持って現れた。

「大塚光圀だな。」

「そうですが。」

「貴様を殺す。」

男が手に持った球体を光圀へ向かって投げるとそれは光圀に見覚えのある物体へと変化した。

去年の母の日参りに美音が使った記憶吸収装置である。

「大塚さん。捕まえましたよ。」

「向井地、逃げろ。」

「何かあるんですか?」

刹那、一瞬の連続でほんの数秒のことだった。

光圀にくっついた美音、美音にくっつかれた影響で、光圀は記憶吸収装置の餌食になるべく、覚悟を決め、自身は逃げない選択をしたが、美音が光圀の背中から前に顔を出し、悲劇が起きる。

記憶吸収装置が美音に着いたのだ。

「向井地。好きなスイーツは?」

光圀のこの質問が美音には、

「好きな人は?」

と聞こえてしまったようで、進士のことを思い浮かべてしまったのだ。

記憶を吸収される美音を助けるべく、光圀は装置を思いきり殴った。

装置は宙を舞い、ナイフを持ち、光圀に迫っていた男のナイフに刺さった。

「うっ。」

男は突然動きを止め、その場に倒れた。

「向井地。向井地。・・脈と呼吸はある。救急車と警察に。」

形がどうあれ、向井地美音が襲撃を受け、刑事事件の被害者となり、その場に光圀が居たことは間違いのない事実である。

警察への事情聴取、現場の遺留品から光圀の供述はなんとか通った。

ところ変わってここは病院。

男の身元は免許証、保険証を持っていなかったことから特定されず、倒れた時点で心肺停止していた。

美音はショックから気を失ったということで回復を待つだけだった。

看護師から美音が意識を取り戻した旨を受け、進士、細井支配人、横山由依が面会に行った。

「細井さん。横山さん。と、どちら様ですか?」

「え?」

「大塚君と警察の話によると向井地が一部の記憶を失っている可能性は充分にあって、その記憶が戻ることはないらしい。」

美音は進士の記憶を失ってしまったのである。

■筆者メッセージ
新潟の事件を事故で片付けるのはどうかと思って、タイトルを変更しました(^_^;)
あの男は飯田聖也(殺人鬼)で生きていたのですが、今回で死にました(T_T)
光圀 ( 2019/06/28(金) 23:58 )