進士
天涯孤独、現代に似つかわしくない言葉だが、発展途上国を初め、世界には存在するだろうが、先進国の一つ日本にいたら違和感しかないだろう。
築地の港に彼は降りたっていた。
彼の名前は百田進士。
しかし、彼を乗せた船は進士が降りたのを確認すると、出港してしまった。
プラカードをかけた進士は築地を歩くしかない。
しかし、船内でもろくな食べ物も与えられなかった進士は倒れるが、地面に顔がつくことはなかった。
進士が目を覚ますと、そこは病院だった。
「気が付いた?ボウヤ名前は?」
名前こそ日本名だが、進士は日本語が喋れないのだ。
看護師は進士の腹部に触れ、口を動かす。
「お腹空いてる?何か食べる。」
進士はとりあえず首を縦にふった。
出された食事を平らげた。
しばらく入院することになった進士。
進士の元に一人の男性がやってくる。
「進士君。初めまして、大塚銀次です。おじちゃんのこと、覚えているかな?」
銀次が進士を庇い、病院に届けた人物だったのである。
銀次により、進士は日本語を学んでいった。
進士は施設に入り、施設のお兄ちゃんとなっていった。
高校生になった進士は暖簾をくぐった。
「へい。らっしゃい!」
「親父さん。お久しぶりです。」
「えっと、どちら様で?」
「銀次さんですよね?昔、病院に送っていただいて、日本語を教わった百田進士という者です。」
「あのときの子供か。少し立派になったな。」
「親父さんにお願いが、僕をアルバイトとしてここで雇っていただけないでしょうか?あのときの恩返しをしないと死んでも死にきれません。お願いします。」
「ま、皿洗い位させてやるか。ただ、他所より安い仕事になるが、それでも良いのか?」
「勿論です。」
銀次との出会いが進士を作ったと言っても過言ではない。