感情
ここは進士の部屋で、ごみ箱には大量のティッシュが入っていた。
花粉症で鼻をかんだ訳ではなく、吐精の跡である。
最初の頃に夢精した不快感から、
進士は起きている内に吐精するようにしている。
進士のその行為はまさに吐精で、おかずにしているのは美音なのである。
進士にとって、美音は自身の命に代えても守るべき存在で、罪悪感もありながら、行為に至ってしまう。
進士も約二十年生きてきている為に、この感情が恋愛感情、その延長であることは解った。
◎
進士は教会に立っていて、周りには神父さんやメンバー、スタッフ等顔馴染みな人物の姿があった。
奥の大きな扉が開き、一組の男女が登場する。
女性の方はウェディングドレスにベール姿だが、その身長と特徴的な唇で誰だか進士には解った。
ヴァージンロードを歩く新婦とその父親の場面は何故か早送りされ、もう既に新婦は進士の隣へ来ていた。
当然のごとく、指輪の交換も早送りで行われ、場面はクライマックスになる。
「誓いのキスをしてください。」
進士は緊張しながら、新婦のベールを上げると、そこには愛しくて、進士の求めた顔が存在した。
「美音。」
ゆっくりと進士は美音と唇を重ねた。
その後も早送りが為され、教会を出ると、光圀と莉乃に小さい子供が二人、正輝と彩と子供というマネドルカップルの先輩と何故か松井珠理奈と男性がいて、珠理奈の首元には真っ赤な首輪が存在していて、犬同様に男性がリードで繋いでいた。
そして、美音によるブーケトスでブーケを手にしたのは珠理奈だった。
◎
良くか悪くか目覚めの時間になった。
「松井さんのあれは一体?」
疑問をもらした進士だったが、スマホに入っていた新しい記録は驚きを生んだ。
「美音。」
進士が寝言で美音を呼んでいた記録を進士はすぐに削除した。
進士はここまでくると重症である。