大人になって
東京暮らし
俺達はカフェへとやってきた。

由紀は東京へやってきて、しばらくしたとき、強姦に遭ったらしい。

そして、運の悪いことに強姦魔の子供を妊娠してしまったらしい。

どんな形であれ、自分の体に宿った命を粗末にすることが出来なかった由紀は、大学を中退し、強姦事件のときに助けてくれた大学の先輩と、その子供として育てていたが、その旦那さんも大学を中退し、ある日電車との人身事故で帰らぬ人となってしまった。

人身事故を起こすと残された家族はその損害賠償等を鉄道会社に対して支払わなくてはならず、由紀も例外ではなく、昼はスーパーのパートタイマー、子供に夕飯を食べさせると水商売をする生活を送っている最中、俺と出会ったということだった。

「だから、私のことは忘れて・・・」

「断る。親の愛情を受けない子供は非行に走る可能性がある。由紀の為に力になりたいって思ってたけど、話を聞いたら、家にいる子供の為に、力になりたいって思った。その子の父親になりたいとは言わない。頼む。由紀。お腹を痛めたお前が、子供のことを思っていないはずはないからな。」

「あの子人見知りが激しくて、あの人みたいになっても保証しないよ。それに生活に影響だって出るでしょ?」

「家の会社はほぼ埼玉県よりで通勤時間が少し変わるだけだ。それに由紀の子なら、だいたい扱い易いはずさ。」

「一緒に住んでも良いけど、寝るときは別か川の字ね。」

「交渉成立だな。」

「本当に良いの?」

「もちろん。なぁ、由紀。子供の名前、聞いて良いか?」

「マユよ。これが写真。」

「マユちゃんか。昔の由紀に似ているな。」

これは偶然なのだろうか。

かつて見た夢と同じ子供の名前、更に最近見た夢に出てきた容姿。

もしかすると、百歩譲って由紀が強姦に遭っていても、父親は旦那さんじゃないのかもしれない。

俺は再び由紀と別れたくなくて、それ以上の詮索はやめた。

■筆者メッセージ
生まれる前から子供が分かっていたら、苦労はしないわな(^_^;)
カタカナに名前の表記はしたけど、もちろんあの字を当てるんです(^_^)v
光圀 ( 2019/06/01(土) 02:24 )